詳報・リクナビ問題 「内定辞退予測」なぜ始めた? 運営元社長が経緯を告白(2/3 ページ)
「リクナビ」問題に揺れるリクルートキャリアが、8月26日に記者会見を開催。小林大三社長が登壇し、学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた件の背景を語った。採用担当者負担を軽減する狙いでリリースしたが、学生への配慮が不足していた他、社内のチェック体制が機能していなかったという。
リクルートキャリア自身も活用
リクナビDMPフォローの分析対象となった学生は、「リクナビ2019」会員のうち1万2330人と、「リクナビ2020」会員のうち6万2548人で、合計7万4878人。このうち、プライバシーポリシーに不備があり、同意を得ていなかった学生は7983人(全てリクナビ2020会員)という。
一連のプロセスを進める上では、顧客企業とリクルートキャリアが業務委託契約を結ぶ形を採っていた。リクルートキャリアは顧客企業に、スコアを内定者フォローに生かすための助言を行うコンサルタントを付けており、定期的に打ち合わせを行いながら採用活動を支援していたという。コンサルタントは、顧客企業がスコアを合否判定に使わないよう監督する役目も担っていたとしている。
会見では報道陣から「実際は、顧客企業が分析結果を合否判定に使っていたのではないか」との質問が出たが、リクルートキャリアの浅野和之執行役員は「使われていることはない。あくまで、内定を辞退する確率が高い人を(採用担当者が)フォローするためのサービスだ」と否定した。
就活生の内定辞退率を予測・提供したのは38社だが、リクルートキャリアがスコアを納品したのは34社。その中には、取引があった旨を公表しているYKKや三菱電機の他、親会社のリクルートホールディングスも含まれるという。リクルートキャリア自身も、応募があった学生の動向を分析し、内定辞退率のスコアを算出していたとしている(同社も34社のうち1社に含まれる)。残る4社は、個別の事情などによってスコアを提供しなかったという。
リクルートキャリアは、契約を結んだ時点で顧客企業から報酬を得ていたが、スコアを提供しなかった4社から報酬を得たか否かについては「個別具体的な事象に関しては申し上げられない」(浅野執行役員)とした。
社内で表彰されていた
こうしたビジネスモデルの同サービスは、リクルートキャリア内からの評価も高く、社内で表彰されたこともあったという。一方、同社の上層部は、データの分析対象となる学生が、自身の行動を監視されていることを知った場合に、どんな気持ちになるか――といったところまでは考えが及ばなかったとしている。
小林社長は「研究開発中のサービスという位置付けであるがゆえに、(検証などの)コストも抑えており、他の部署による俯瞰的なレビューなどを経ていなかった。そのため『学生の皆さまに不審を抱かれるサービス内容なのか』という観点が欠けていた」と振り返った。
「当社には、大学(のキャリアセンター)と接点を持っている部署がある。この部署がリクナビDMPフォローのことを事前に知っていたら、『(法的・倫理的に)良くない』という指摘は出てきただろう。だが実際は、この部署のレビューを経ることなくリリースしてしまった。リリース後もこの部署のスタッフは、当社がデータを利活用していることは知っていたはずだが、スコア算出の詳細は知らなかった」(小林社長)
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