勤務先がつぶれた“30代無職”が、インディーゲーム開発で成功をつかむまで(1/3 ページ)
ゲーム開発者の佐藤大悟さんは、勤務先だったゲーム会社がつぶれ、30代で無職に。「自分がやりたいことは何か」を考え直し、モバイル向けインディーゲーム開発者として生きる道を選んだ。
ゲーム開発者の佐藤大悟さん。Activision、スクウェア・エニックス、ディー・エヌ・エー(DeNA)を経て、米国シリコンバレーのゲーム会社に勤めていたが、その会社がなくなってしまい、30代で無職に=「CEDEC 2019」で撮影
勤務先だった米シリコンバレーのスマートフォンゲーム開発会社がつぶれ、30代で無職になった男性がいる。ゲーム開発者の佐藤大悟さんは「(幸せな)あの日々が永遠に続くと思っていた」と当時を振り返る。開発中のゲームは全てリリース中止。「自分がやりたいことは何か」を考え直した佐藤さんは、「好きなゲームを作り、Google社員並みのリッチな生活を送りたい」と考え、モバイル向けのインディーゲーム開発者として生きる道を決めた。2年間の試行錯誤を経て「サラリーマンよりはもうかっている」という。
黙々とゲームを作り続け、App Storeの特集ページでピックアップ(フィーチャー)される作品も複数出てきた。そのうちの1本「くまのレストラン」は、死者の“記憶のかけら”を頼りに生前の好物をふるまう──というストーリーのゲーム。いわゆる「ガチャ」の要素はなく、本編のストーリーは無料でプレイできるようにした。佐藤さんは、追加ストーリーの販売やアプリ内の広告などで収入を得ている。
好きなジャンルのゲームを制作して生きていくために、どのようなことを心掛けているのか──ゲーム開発者イベント「CEDEC 2019」(9月4日、パシフィコ横浜)で、佐藤さんがノウハウを語った。
「ないないづくし」のゲームデザイン
佐藤さんは、ゲームデザインについて「ユーザーからの期待値を下げることが重要だ」と話す。佐藤さんが作るゲームは(1)低解像度のドット絵のみを使い、高解像度にはしない、(2)スマホの縦持ちに特化し横持ちにはしない、(3)画面はスクロールしない、(4)バトルシステムもなし、(5)オンライン要素は避ける──というように「ないないづくし」という。
低解像度のドット絵にこだわるのは、グラフィックが高解像度だと「ユーザーの想像力に頼れなくなったり、必要な描き込みやアニメーション数が増えてしまう、といった理由から。スマホの横持ちに非対応なのは、ユーザーが家庭用ゲーム機の画面を連想し、高いクオリティーを求めてしまうのを防ぐ狙いがある。
画面のスクロールを実装すると、ゲーム内のマップを広くしなければならず、開発に工数がかかる。バトルの機能も同様で、対戦システムの実装だけでなく、キャラクターを成長させる仕組みも導入しなければならず、開発者の負担が大きい。オンライン要素は、アプリを複数作成してリリースしていくことを考えると、サーバの管理コストが増大する可能性がある。こうした負担をなくすためにも、機能を絞っているという。
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