ゲームストリーミング、通信インフラが普及の鍵を握る? 東京ゲームショウで議論
ゲームのストリーミングサービスが本格化に向け展開を見せている段階にあるが、各国のゲーム市場に詳しいジャーナリストや研究者は通信インフラに課題があると指摘している。
クラウド上でゲームを動かすゲームストリーミングサービスが本格化しつつある。米Googleが11月に提供を始める「Stadia」や、米Microsoftの「xCloud」など、“IT巨人”たちの参入で競争激化が見込まれているが、「東京ゲームショウ2019」(千葉・幕張メッセ、10月12〜15日)の基調講演に登壇した各国のジャーナリストや研究者らは、ゲームストリーミングの普及には通信インフラ整備の課題があると指摘している。
5Gで盛り上がる以前に、ネット環境がない地域も
ゲームストリーミングサービスは、ゲームの描画処理をサーバ側で行い、ユーザー側の端末には主に映像を配信する仕組み。ユーザー側の端末は、送られてきた映像を表示しつつコントローラーの入力情報をサーバ側に送るだけで済むため、端末側にハイスペックな処理性能を必要とせずに高品質なゲームが楽しめるようになる。しかし、全てのやりとりがネットを介して行われるため、短い反応速度が求められるアクションゲームなどには不向きとされてきた。
そこで注目されているのが、次世代通信「5G」だ。高速・大容量、低遅延という特徴を生かすことで、特にモバイル向けのゲームがストリーミングの恩恵を大きく受けられるのではないかとの見方がある。
韓国でゲームメディア「THIS IS GAME」を運営するイム・サンフンさんによれば、韓国の通信大手・SKテレコムと米Microsoftが5Gやクラウドの分野で提携するなど、5Gでゲームストリーミングを楽しめる環境が整えられようとしている真っただ中にあるという。
一方で、ドイツのゲームメディア「IGN Germany」で編集長を務めるセバスチャン・オソウスキーさんは「ドイツではそもそも5G以前に、3Gすらつながらない“ブランクスポット”がある」と嘆く。首都ベルリンのような大都市なら安定して通信できるが、ゲームを1本ダウンロードするのに2日もかかるような地域もあるなど、都市圏と地方の格差が大きいと指摘している。
さらに通信が安定している大都市であっても、通信速度の制限がストリーミングサービス普及のネックになるとの懸念もある。日本と同様、海外でも契約した通信データ量を超過すると、通信速度を制限される仕組みがある。音声や動画に比べて通信量が大きくなるとされるゲームストリーミングは、この制限を受けやすいだろう。
大容量の通信を必要とするゲームストリーミングを楽しむには、比較的高価な通信契約がユーザーに強いられることになる。
ゲームストリーミングには違法コンテンツ対策にメリットも
通信インフラなどの課題が指摘される中で、ゲームストリーミングならではのメリットも挙げられた。中国のゲーム市場に詳しい中村彰憲教授(立命館大学)によると、ゲームに限らず、ストリーミングサービスには違法コンテンツを駆逐する効果がある。
中国では世界各国と同様に映像のストリーミングサービスが流行している。基本的に多くのコンテンツが無料で見られるが、一部の先行配信動画を有料とするサービスが登場し、それまで違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードしていた人が、料金を払って映像を見るようになっているという。
ゲームコンテンツの配信は、パッケージ販売が当たり前だった以前から大きく様変わりした。通信インフラや、ユーザーがゲームをプレイするために負担する全体コスト(通信料金+プレイ料金)など、ゲームストリーミングが普及するまでの道のりは遠く感じられるが、その先には今と違った景色がまた広がりそうだ。
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