チョウ型ドローン、エアチューブ式人工筋肉、キューブ状ガスボンベ──最新の国内技術をチェック:イノベーション・ジャパン2019(1/2 ページ)
テクノロジー見本市「イノベーション・ジャパン2019」で展示された、最新の国内技術をピックアップして紹介する。
2019年8月29〜30日に開催された、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と科学技術振興機構(JST)主催のテクノロジー見本市「イノベーション・ジャパン2019」(東京ビッグサイト)。大学や企業の意欲的な技術が見られる展示会であり、展示ジャンルも多岐に渡る。
その中でも実用化が近そうな、少し未来の技術をピックアップして紹介する。
残るは無線化 足掛け15年の「チョウ型ドローン」
東京電機大学では、生物の動きをロボットに生かす「バイオミメティクス」によるチョウ型ドローンの研究が進んでいる。
ドローンといえば4基以上のプロペラで飛ぶ姿を思い浮かべるが、この小型ドローンはアゲハチョウの飛翔メカニズムをお手本にしている。実際のチョウと同じ、手のひらサイズのモデル開発に取り組んでいる。
用途は災害現場など狭い空間の観測システムや、アミューズメント施設での活用を想定しているという。
開発に携わる藤川太郎准教授は、小型かつ軽量・シンプルなドローンの研究過程で、騒音もなく、秒間約10回程度のはばたきという小さなエネルギーだけで宙を舞うアゲハチョウのメカニズムに注目した。
アゲハチョウは、翅を下向きに動かす際に上昇しつつ、身体を起こす。次いで、翅を上向きに動かすときに前進する。このメカニズムを取り入れるべく、約15年前から研究を開始した。現在は上下左右の飛行制御を実現しており、有線電力供給での羽ばたき飛行も実証済みだ。
積載重量は自重の約1.5倍まで。アミューズメント施設などでのエンターテインメント用途の他にも、介護施設などから「監視のストレスを感じさせないカメラ」としてチョウ型ドローンにカメラを搭載したいという相談もあったという。
無線飛行に当たっての課題は、数百ミリグラムのバッテリーと数マイクロメートルの翅用フィルムの調達だとしている。
軽量で応用範囲の広い人工筋肉
東京工業大学が行っていた展示の中で、ひときわ目立っていたのが「空気式人工筋肉」だ。
人工筋肉の駆動方式にはいくつか種類があるが、東京工業大学が岡山大学と共同で開発したものは、ゴムと空気で動く「細径マッキベン型人工筋肉」というもの。
この方式では、ゴムチューブの外周をメッシュで包む。このチューブ内に空気を送ると、チューブが軸方向に収縮し、筋肉のように動く。原理自体は1960年ごろに登場したが、東工大などの研究グループが開発したものはゴムチューブの外径が2〜5ミリと従来より細く、しなやかである点が強みだという。駆動するコンプレッサーにも小型製品を採用し、軽量化を図っている。
用途としては、介護スタッフの支援やロボット駆動への応用を想定している。介護スタッフの肉体的負荷を軽減する全身サポートスーツの開発が進んでいる他、ロボットの駆動に生かすべく、制御面での実験も行なっているという。
ペットボトルがそのまま「羽根」になる新型風車
長岡技術科学大学は、羽根らしい羽根がないのに、風を受けてくるくると回る「新型風車」を展示している。
風車といえば、板状のプロペラで風を受けて回転するものが一般的だ。しかし、風力発電で巨大かつ効率的に風を受け止めるには、材料や形状に工夫が必要になり、コストがかさむ。
そんな風車事情の課題を解決できそうな新しいアプローチが、同大の「縦渦リニアドライブ」技術だ。この技術を応用すれば、ペットボトルをそのまま羽根にできてしまうという。どういうことなのか。
縦渦リニアドライブの原理は、送電線が強風で激しく揺れる「ギャロッピング」という現象の研究に基づく。
ギャロッピング現象とは、雪や氷が付着した状態の送電線に強風が当たったときに、通常起こらないような大きな揺れが起きる現象だ。これが理由で電線がショートすることもある。
同大の研究グループはギャロッピング現象の振動を抑える研究をしている。その研究過程で、円柱の後ろに十字になるように平板を設置すると、「カルマン渦」という渦現象によって振動を抑えられることを発見した。一方、円柱と平板間の隙間が狭い場合には、カルマン渦ではない「縦渦」によって振動が起こることも分かったという。
その縦渦による振動抑制の研究を進めていく中で「縦渦リニアドライブ」が見つかった。円柱が平板に沿って移動すると、後方に縦渦が発生し続ける。すると円柱の進行方向前後に揚力が生まれ、回転が始まるという。
高圧ガス容器を容量そのまま「28センチのキューブ」に
ガスボンベといえば、緑色で細長い円柱状のものがスタンダードだ。しかし、多孔質の材料(多孔性配位高分子)の活用を手掛けるAtomis(京都市上京区)は、高さ150センチのガスボンベ容量を一辺28センチのキューブに収めてしまう新型ガスボンベ「CubiTan」を開発している。
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