AIに従うことの危険性 「正しい意思決定」という幻想から抜け出すには?:これからのAIの話をしよう(データリテラシー編)(4/4 ページ)
ジェフ・ベゾス氏らと共に、米Amazon.comの基礎を作り上げたとされるデータサイエンティストのアンドレアス・ワイガンド氏。企業や個人がどのようにデータを向き合っていけばいいのか、話を聞いた。
――「百聞は一見に如かず」ですね。分析者は実際に現場へ行き、データの源に触れて、仮説を立てるべきだと。
その通りです。実際に経験をし、実験をしてください。日本に来る3日前、シンガポール航空のファーストクラスのラウンジ管理者と話をしました。顧客の満足度を上げるにはどうすればいいかを話し合ったのですが、私は担当者に「顧客に関して、どういったことを知りたいんですか」と聞きました。例えばファーストクラスのラウンジに来る人は、自分の顔を見た従業員にすぐもてなされたいのか、あるいは声を掛けられないままゆっくりとラウンジで過ごしたいのか。つまり、「自分を誰か知った上できちんと接客してほしい」と思うのか、「知った上でそっとしておいてほしい」と思うかの違いです。
――そうした話は、数字で表現するのが難しそうですね。
私がシャワーを浴びている時間が分かったら、従業員はシャワーの時間に合わせて何か行うべきなのか――なども考えられます。常に人間を観察しながら仮説を立てるんです。
――データサイエンティストは、数字を観察し、人間のインサイト(人を動かす隠れた心理)を観察するのが本来の仕事なのですね。
そうです。私の場合は特に、人間の行動に対して非常に興味を持っています。人間が商品を購買するという決定をどのように行うか、それにZOZOがどのような影響を与えるかに非常に関心があります。
取材後記
約100分に及ぶ取材で、データにまつわる率直な疑問をぶつけることができました。日本におけるデータサイエンスは分析手法に特化した事例が多いと感じていますが、今後は観察手法や実験例も注目されていってほしいと思います。
また、「人間は正しい意思決定をしている」「私たちはデータを所有し、管理できる」というのは思い込みであり、前提が間違っているということも分かりました。それを踏まえた上で、私たちは何をしていくべきなのでしょうか。まずはデータに対して真摯(しんし)に向き合うことから始めていきたいものです。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
著者より単行本発売のお知らせ
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