血液クレンジングに京都盛り上げツイート、ステマ騒動に学ぶSNSの自己防衛(3/3 ページ)
10月はステマ疑惑が話題になった。「京都市盛り上げ隊」としてツイートしていたお笑いコンビ「ミキ」、血液クレンジングを繰り返し紹介していた芸能人たち、彼らはどこまで意図していたのか。
吉本興業はどう対処すべきだったのか
ここまでは意図せずステマっぽい情報を発信してしまうケースを紹介してきたが、冒頭の吉本興業の例は事情が全く異なる。
人の健康に対する漠然とした不安を利用したマーケティングというわけではなく、あくまでも市のPRという業務を、どのように進めるべきかというポリシーの話だ。クリニックのステマ疑惑に比べれば悪質ではないともいえるが、切り口を変えると、より悪質であるともいえる。
なぜなら、市の担当者および吉本興業ともに、ステマだとは思っていないからだ。SNSなどでは金額の多寡も話題になっているが、金額そのものは大きな問題ではない。インフルエンサーが代理店に卸す際の金額は、およそフォロワー1人あたり1円程度。今回の場合、他の広報宣伝案件もパッケージにしたものであり、京都市の担当者が言うような格安だとは思わないが、実施費用としては妥当だ。
問題は、吉本興業が出した請求書に、SNSでのPRメッセージ発信に対して明確に費用を支払っているにも関わらず、まるで京都出身の発信者(お笑いコンビ・ミキ)が郷土愛から自発的に書いているように見せていることだ。
吉本興業も京都市も、もともと市のプロジェクトとしてPR活動を行っていることは隠していないのだから、特に明記する必要ないと主張している。しかしTwitterの書き込みは一連の文脈を一度に辿れるわけではない。単独のツイートが独り歩きすることはよくある話で、だからこそPRであることを明記するルールになっている。
しっかりとPR表記をして発信した上で、ミキの二人が自分自身の言葉と郷土を想う気持ちに従って伝えていれば、PRを表記していても共感を得られたはずだ。
SNSは「共感のメディア」だ。前述の健康、医療のマーケティングは、心配事に心を寄せることで共感しあってるかのように演出したともいえる。言い換えれば、今回の問題も情報を受け取る側の気持ちに立ち、素直に対処し、改めて自分たちの言葉で語りかければ炎上が広がることはなかったのではないか。
ネットの情報は消えない
さて、意図して誤った情報を流してしまうことは問題だが、一方でネットは情報を消すことが難しいメディアでもある。お笑いコンビのミキは今後、ステマ疑惑の情報がなかなか消えずに悩むことになるだろう。誤った、あるいは曖昧で正しいかどうかを判断するのが難しい情報について発信したことを後悔しても、転載されたり、誰かが自分の意見として再発信し始めると拡散が止まらなくなる。
わたしたちは皆、SNSやブログ、あるいはメールや普段の会話の中ですら、知らずに詐欺まがいの情報を広げることに加担してしまう可能性がある。もし誤った情報を発信してしまったことが分かった時は、「知らなかった」と被害者ぶるよりも素直に間違いを認め、誤った情報であったと、より声を大きくして発信するべきだろう。それが、発信した情報を消せない時代の次善の策である。
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