スマホ片手に体育の授業 ARゲームを教育に取り入れた高校(2/2 ページ)
筑波大学附属高等学校がスマートフォンのARゲームを使った体育の授業を報道陣に公開した。きっかけは生徒が作った企画書。スマートフォンを片手に武道場を走ったり、飛び跳ねたりする。
「ARゲームを体育の授業に」生徒が企画書を作って教員にプレゼン
体育の授業にARゲームが採用されたきっかけは、生徒が作った企画書だった。筑波大学附属高等学校では、体育の選択科目の内容を生徒が提案する方針だ。授業でやりたいスポーツや体を動かす遊びを生徒が考えて企画書を作り、体育科の教員が授業の趣旨にあったものを採用する流れだ。授業時間の使い方や競技のルールなども生徒が自主的に考えて設定する。
普段はバスケットボールやソフトボールといった一般的なスポーツの提案が多いが、時にはフライングディスクを使う「アルティメット」や、2本のロープを使って跳ぶなわとび「ダブルダッチ」など珍しい競技が提案されることもある。今回は、生徒の池田駿介さんがARゲームを提案したという。
「最初はダメ元で企画書を作りましたが、運動量がしっかりあるという点をアピールしました」(池田さん)
池田さんはもともとペチャバトのプレイヤーで大会などにも参加していた。提案をするにあたり、大会で知り合ったGraffityの齋藤翔太さんに連絡して許可を取り、昼休憩や放課後の時間を使って企画書を作ったという。
同校体育科教諭の中塚義実さんは、ARゲームを採用した理由について「実際の体の運動がある」としている。これまでも競技性の高いゲームをプレイする「eスポーツ」を提案した生徒がいたが、机に向かってコントローラーを操作するもので、運動を伴わないため採用していなかった。
「授業で採用してみて、いい面も見えてきた」
中塚さんは「普段はスマートフォンの利用によるデメリットを強く感じているが、今回授業で(ARゲームを)採用してみて、いい面も見えてきた」と話す。
教育現場でのスマートフォンの利用には賛否両論ある。情報端末としての便利さから授業でも積極的に活用するべきだという意見がある一方で、「授業中に遊んでしまう」「SNS上でのいじめやトラブルに巻き込まれてしまう」といった懸念から、学校での利用を禁止する場合も少なくない。
筑波大学附属高等学校では、校内でスマートフォンの利用を禁止していない。中には授業中に調べ物をする道具として正式に使う機会もあり、「マナーを守っていれば問題はない」という方針だ。中塚さんは「スマホの扱いはさまざまな観点がありデリケートな問題」としながらも、授業で活用する分には抵抗がなかったとしている。
他にもARゲームを授業に採用して良かった点として、運動が苦手な人でも楽しめることを挙げる。
「体育の授業をサボりがちだった生徒も、途中から面白くなってきたのか、のめり込むように取り組んでいました」(中塚さん)
「スポーツがあまり得意じゃない人でも気軽にやりやすいゲームだと思うので、今後は体育の授業やクラブ活動でどんどん採用されるといいなと思います」(池田さん)
「学校でのスマートフォン使用は断固禁止するもの」──そんな現場の意識が少しずつ変わり始めている。いかに現状の課題を克服しながら情報機器の強みを生かした教育を行えるか、検討の余地は広がっている。
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