介護特化の人型巡回ロボット 異常時には部屋に駆け付けドアを開閉
ロボット開発を手掛けるテムザックと介護関連事業を行う高山商事が、介護施設向けの自律型巡回ロボットを発表。施設内での巡回、見守りの他、顔認証や転倒者の探知機能を搭載した。介護業務の省人化によって、業界の人手不足解決を目指す。
ロボット開発を手掛けるテムザック(福岡県宗像市)と介護関連事業を行う高山商事(愛知県名古屋市)は11月18日、自律走行して介護施設を巡回する見守りロボット「SOWAN」(ソワン)を発表した。利用者が装着する活動量計と連動し、異常時には部屋に自動で駆け付けて職員に現場の状況を映像で伝える。利用料金は月額6万6000円(税別)から。
介護施設向けの自律型巡回ロボット。見た目を人型に近づけたピンク色の「タイプI」と、人間らしさを極力排除したという「タイプII」の2種類を用意した。タイプIのサイズは400(幅)×400(奥行き)×1365ミリ、タイプIIのサイズは400(幅)×400(奥行き)×1360ミリ。いずれも重さは60キロで、機能も同等。
本体には自動運転車などにも使われる全方位センサーを搭載しており、障害物を自動検知して回避する。自己位置推定と地図作成を同時に行うSLAM技術を活用することで、決められたルートを高精度に巡回できるという。巡回ルートは、事前に介護施設スタッフと一緒に施設内を回って記憶する仕組み。
利用者が装着した活動量計の脈拍数を見守る機能も搭載した。事前に設定した脈拍数を超えると、職員が管理する端末からの出動指示に応じて、ソワンが入居者の部屋へ駆け付ける。あらかじめ部屋の引き戸をソワンが自動で開閉できる後付けシステムを設置することで、ソワンが単独で入退室できるという。
ソワンは、頭部に搭載したカメラで、入室と同時に映像の録画をスタート。職員は映像を遠隔で確認しながら利用者と音声通話も行える。
オプションとして、事前に登録した利用者を巡回中に見つけた場合、部屋に戻るように声かけする機能や、バッテリー残量が少なくなったときに自動で充電スタンドに戻って充電できる機能、転倒者を発見した際に警報を発する機能も用意する。各施設の設備や要望に応じて、必要な機能や走行速度の設定、料金などを提案していくという。
開発の背景は、介護業界の深刻な人手不足
高山商事の高山堅次代表取締役は、「介護業界の人手不足は喫緊の課題。今後も少子高齢化で人員確保は難しく、高い報酬の支払いは介護施設の経営を逼迫(ひっぱく)する。介護スタッフが行う業務で省人化できるものを、ロボットへ代替できないかと考えた」と開発のきっかけを話す。
介護の現場は24時間対応が求められ、特に夜間は少ない人員で業務に追われることが少なくないという。高山代表取締役は「ストレスで離職につながる現状を、ロボットで解決したい」と期待を寄せる。住居型の有料老人ホームで行った実証実験では、夜間の定期巡回に費やしていた3時間分の人件費を削減できたという。
ソワンの出荷は2020年6月以降を予定。目標販売数は累計3000台としている。
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