ドコモの「IDaaS」導入秘話 「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司との戦い(2/2 ページ)
企業では現在、認証サービスにクラウド型の認証基盤「IDaaS」(Identity as a Service)を利用する取り組みが活発化している。NTTドコモは、IDaaSベンダーの米Auth0に出資し、同社のサービスを「docomo sky」の認証基盤に採り入れている。その裏側で開発担当者は、「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司を説得していたという。
ログイン基盤の開発を2年から1週間に短縮
dアカウントの認証システムの開発には2年を要したドコモだが、Auth0を活用したことで、docomo skyのログイン基盤を作る作業は1週間ほどで完了した。自社開発とは比較にならないほどのスピード感だ。
「要件を見直した際に、後から機能を柔軟に追加できた点がSaaS活用のメリットだと感じました。2段階認証は当初は予定になく、開発が始まった後に実装が決まりましたが、手戻りなく迅速に対応できました。dアカウントやSNSによるソーシャルログイン機能もスムーズに採り入れることができました」
ドコモはdocomo skyの他、ドコモショップの店員が利用する内部サービスのログイン基盤でもAuth0を利用している。ショップ店員はドコモの社員ではなく、業務委託先の社員が担当しており、ログイン基盤をドコモ側で開発するのが難しい事情があるためで、柔軟な店舗運営に一役買っているという。
社内の風潮を変え、docomo skyをスピーディーに開発した兼岡氏は、セッションの最後に「開発では既存の仕組みを活用し、われわれはビジネスそのものに注力することが大事です」と語った。
「サービスの本来の価値ではない機能に時間とコストを割いていたら、力を入れるべき部分に手が回らなくなってしまいます。良さそうな外部サービスがあれば、取りあえず使ってみるという精神は大切です」
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