「スマホを使うのがダサい時代になってほしい」 未来を先取りするVR・AR開発者たちの思い
VR・AR関連イベント「XR Kaigi 2019」が開催。基調講演にVR・AR開発者らが登壇し、これらの技術が普及した未来について語った。
「2025年には、スマートフォンを使うのはダサいよね、といわれるようになってほしい」――VR開発を手掛けるエクシヴィ代表取締役の近藤“GOROman”義仁さんは、12月3日に開催されたVR・AR関連イベント「XR Kaigi 2019」のパネルディスカッションで、こう語った。
講演には、米Nianticの川島優志さん(アジア・パシフィック オペレーション 副社長)、PlayStation VR向けソフト「Rez Infinite」などで知られる米Enhance水口哲也CEO(Synesthesia Lab主宰)も登壇。川島さんも「スマホの小さい画面を操作すること自体が、本来不自然なこと。AR技術が進化すれば、人間とデジタル世界の触れ合い方も変わっていく」と同調した。
AR技術は「Pokemon GO」などでなじみのあるユーザーも多いが、VRゴーグルを装着したことがある人は、まだそこまで多くないだろう。XR(VR・AR・MRなどを含めた呼称)によるリアリティー体験は、私たちの未来をどう変えるのか。
Ingressで世界の見え方が変わる
川島さんが所属するNianticは、「Pokemon GO」「Ingress」「ハリー・ポッター:魔法同盟」などの位置情報ゲームで知られる会社だ。現実世界とゲームのフィールドが連動しており、AR技術を活用して、現実世界にポケモンやハリー・ポッターのキャラクターを出現させることができる。
川島さんは「ARは、何もないところに物体を出現させる技術だと思われがちだが、そうじゃない。Nianticでは、世界中にもともとある素晴らしいものを人々の想像力とつなげることを目指している」と話す。
Ingressでは、史跡や神社などがポータルと呼ばれる目的地に設定されており、普段は気付かない街の風景を見直すきっかけになると評されている。Ingressのポータル周辺には、エキゾチック・マター(XM)と呼ばれる光の粒が表示されるのだが、熟練したIngressユーザーはもはやスマホ画面を開かなくても「ここにはXMが流れている」と分かってしまうという。
上記の例は半分笑い話でもあるが、川島さんは「(Ingressでの体験を)リアリティーとして感じて、他の人と共有している。世界の素晴らしさを再発見し、自分自身の認識も再発見している」と語った。
これからは体験の時代へ
ポケGOなどのスマホゲームを通して、体験の共有がしやすくなったのは確かだろう。街中にレアポケモンが出現すると、ポケGOユーザーは一斉に同じ場所に集まる。こうした体験は、他のゲームではなかなかできない。水口CEOは、「今は情報メディアの時代だが、あと10〜20年くらいしたら革命が起きて、体験メディアの時代になるのではないか」と話す。
5G通信が普及してリアルタイムに伝送できるデータ量が増えることで、VR空間上などでも手軽に体験を共有できるようになるのでは――という考えだ。近藤さんも「今はGoogleの画像や動画検索があるが、体験を検索する機能が出てくる可能性もあるだろう」と賛同する。
「今は紙のパラダイムの時代で、ドキュメント、デスクトップ、ホームページなどの言葉は、どれも紙の概念の延長。これからは空間パラダイムの時代になるのでは」と近藤さん。「例えば企業のホームページがなくなって、ホームアバターとチャットする対話型インタフェースになっていくのではないか」と続けた。
水口CEOはこうしたXR業界の流れに対し、「現実はディストピア化しているように感じるので、人間の能力を拡張したり、人間が幸福を感じられるような方向で考えることが大事だ」と指摘。例えば、ARグラスを装着して、街の風景がバーチャル広告で埋め尽くされる風景は、あまり想像したくないものだ。こうした問題について、近藤さんは「今はノイズキャンセリング機能があるイヤフォンがあるが、これからは視界をノイズキャンセリングする必要が出てきそうだ。課金することで広告を消すこともあり得るかもしれない」と答えた。
基調講演の会場では、VR・AR開発者も多く見られた。川島さんは、「周りからVRは終わったねと言われたとしても、ぶれずに開発を続けてほしい。NianticもPokemon GOが出るまでいろいろあったが、諦めないしつこさが大切だ」と開発者たちにエールを送った。
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