NECがアニーリング方式量子コンピュータに傾倒する理由 国産マシンは23年に実用化(1/2 ページ)
日本電気は量子コンピュータに関する活動を推進する部門「量子コンピュータ推進室」を20年1月に設置する。「量子アニーリング方式」の量子コンピュータを開発に向け、先駆者のカナダD-Wave Systemsと協業を検討。NEC製の古典マシンを使ったアニーリングのシミュレーションも。NECが量子アニーリングに傾倒する理由とは。
日本電気(NEC)は12月19日、量子コンピュータに関する活動を推進する「量子コンピューティング推進室」を2020年1月に開設すると発表した。従来のコンピュータによるアニーリングのシミュレーションを通した組合せ最適化計算の実証環境を提供する他、「量子アニーリングマシン」を開発するカナダD-Wave Systemsへの投資も検討していく。
国産量子アニーリングマシンは4量子ビットの動作検証中 2023年までに実用化
NECが注力する「量子コンピュータ」は、量子アニーリングという量子理論を用いて組合せ最適化問題を計算できるマシンだ。米GoogleやIBMなどが開発している、「万能型」ともいわれる量子ゲート方式の量子コンピュータとは動作原理が異なる。
同社は2018年から量子アニーリングの研究体制を強化しており、東京工業大学や早稲田大学、横浜国立大学、産業技術総合研究所などと共に国産の量子アニーリングマシンを開発するプロジェクトを発足。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の新規事業に採択された。23年の実用化に向け開発を進めている。
NECなどが作る国産量子アニーリングマシンは超電導量子ビットを用いる方式で、現在4量子ビットの動作を検証中。コヒーレンス時間(量子状態を維持して計算できる時間)がこれまでの量子ビットに比べて長く、理論的には量子ビットを全結合でスケールできるのが強みだという。量子アニーリングマシンで先行するD-Wave Systemsの量子ビットは隣接結合で、計算問題によっては利用できる量子ビット数が実質的に減ってしまうというデメリットがある。
D-Wave Systemsは量子アニーリングマシンの先駆者としてユーザーニーズなどの知見を多くためている。そこでNECはD-Wave Systemsへ投資し、知見の共有やソフトウェアなどの開発加速に向けて協業することを検討しているという。
並列処理特化型プロセッサ「ベクトルコンピュータ」をアニーリング実証環境に
量子アニーリングのシミュレーション環境としては、NEC製の並列処理特化型プロセッサ「ベクトルコンピュータ」を利用した独自開発アルゴリズムを用意。20年第1四半期にアニーリング検証サービスを開始する。グラフィックスカードのような1枚のボード上で10万変数(量子ビットに相当)の全結合問題を解けるという。
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