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「変化への予兆」が揃ってきた、2019年のVRとAR そしてその先は?(2/4 ページ)

西田宗千佳さんに、VRとARの2019年、そしてその先を分析してもらった。

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ひっそりと終わった「スマホVR」の時代

 スタンドアロンVRが本格的に立ち上がった一方で、静かに引導を渡された存在がある。「スマホVR」だ。

 2019年10月、Googleは同社のAndroidスマートフォン向けVRフレームワークである「Daydream」のビュワーである「Daydream View」の販売を終了すると発表した。Googleブランドの最新スマホである「Pixel 4」も、Daydreamに対応せず、プラットフォームは実質的に終わる。2018年にはOculus GoとともにスタンドアロンVRを率いた「Mirage Solo」も、Daydreamベースであったために同時に価値を失った。もっともこちらは、2019年にはいったあたりから処分価格に突入しており、厳しいことが見えていたが。

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ありし日のDaydream View

 また、その前には、OculusとSamsungが共同で展開していた「Gear VR」事業を実質的に終了している。こちらも、サムスンの最新スマホ「Galaxy Note10」以降ではサポートされていないし、新しいデバイスも出ていない。

 もちろん、今もシンプルなスマホVR用のHMDは店頭に並んでいるし、それらを使ってアプリを楽しむことはできる。しかし現状、大規模展開するプラットフォームとして、スマホVRを本気でやっているところはなくなった、といってもいい。

 なぜそうなったのか? 答えはシンプル。存在に矛盾があったのだ。

 そもそもスマホVRは「手軽な代替策」「ちょっと体験できればいいもの」として位置付けられていた。360度写真・動画などを見るなら、それでもいいだろう。そこに価値がなくなったわけではない。Cardboardやハコスコのように、数百円以内で買える「ビュワー」はコストの考え方が全く違うので、今後も生き残っていくだろう。そもそも「買う」という発想すらなくなりつつある。

 だが、アプリケーションを本格的に開発したり、快適なVR体験のために有機EL搭載のハイエンドスマホを求めたりするような形でのスマホVRにはもう市場性がない。そのために数万円をかけて環境を整える人はどのくらいいるだろうか? ちょっとお金を出せば、Oculus Questが買えるのに、わざわざまがいものにお金を出す人はいない。

 ハイエンドスマホの拡販物としてのVRではなく、いよいよ本物のVRが市場として立ち上がりはじめている。だからこそ、スマホVRは死んだし、死ぬ運命にあったのだ。

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