AIがマンモグラムでの乳がん検出確度で人間の医師を上回った──Google論文
Googleのヘルスケア部門Google Healthは、9万人以上の匿名マンモグラムデータで学習させたAIモデルに画像データだけで乳がんのスクリーニングをさせたところ、人間の放射線科医よりも偽陽性・偽陰性率が低かったという研究結果を発表した。
米Googleのヘルスケア部門Google Healthは1月1日(現地時間)、AIによる乳がん診断に関する論文をNatureで発表した。6人の放射線科医と比較した研究では、開発したAIシステムは放射線科医全員より正確に乳がんを特定した。
Google HealthはGoogle系列のAI企業DeepMind、英Cancer Research UK Imperial Centre、米ノースウェスタン大学、英Royal Surrey County Hospitalと共同で、英国の7万6000人以上、米国の1万5000人以上の女性の匿名化したマンモグラフデータで学習させたモデルを構築した。このモデルを学習データとは別の2万8000人以上(英国2万5000人、米国3000人)の匿名化データセットで評価したところ、偽陽性(がんではないのにがんだと診断すること)が英国では1.2%、米国では5.7%減少し、偽陰性(がんなのにがんではないと診断すること)は英国では2.7%、米国は9.4%減少したとしている。
専門医は画像診断に際し、患者の病歴や過去のマンモグラムを参照できるが、このAIモデルはマンモグラムのX線画像のみに基づいて診断する。
乳がんのマンモグラフィによる検査は現在最も一般的な検査方法で、英米だけでも毎年4200万件以上の検査が行われている。これらのレントゲン画像の読み取りは専門医でも困難とされており、偽陽性、偽陰性の誤診断の可能性が高い。
Googleは、2017年にはリンパ節のサンプルから転移性乳がんを検出する方法に関する初期の研究結果を発表し、2019年には医師が病理画像で乳がんを発見するためのディープラーニングアルゴリズムも開発した。
同社は今回発表したAIシステムが専門医をサポートできるようになるよう、パートナーと協力して開発を進めていくとしている。
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