Kubernetesの登場後、コンテナ型仮想化はどう発展した? 技術トレンドの変遷を振り返る(3/5 ページ)
コンテナ型仮想化の技術は現在、DockerコンテナそのものからKubernetesを軸としたオーケストレーションツールへと主役が移ってきている。そうしたコンテナ型仮想化技術のここ2年半ほどの動向を、ITジャーナリストの新野淳一氏が解説する。
Kubernetesとエコシステムの成熟
Kubernetes本体の成熟とエコシステムの発展も、この時期に見られた動きでした。
2017年12月に登場したKubernetes 1.9では、Windows Serverがついにサポートされ、それまで本体に含まれていたストレージインタフェースがプラグインとして切り出される準備が始まりました。
2018年3月には、Kubernetes本体がインキュベーション段階から卒業。
これを待っていたかのように、2018年5月にはGoogle Kubernetes Engineが正式版に。6月にはAmazon EKS(Amazon Elastic Container Service for Kubernetes)が正式版となりました。
2018年12月には前述したKubernetesのストレージインタフェースが正式版に。
2018年12月に開催された「KubeCon + CloudNativeCon North America 2018」のキーノートでは、「Kubernetesは以前より成熟し、より良いものになったことで、とてもとても退屈なものとなりました」と説明され、Kubernetes本体の成熟さが示された一方で、プラグインAPIなどによる拡張性を重視していく姿勢が表明されました。
もちろんKubernetesはまだまだ発展途上のソフトウェアであり、いまでも6カ月ごとのバージョンアップが行われています。しかしソフトウェアの品質としては本番利用に耐えるほどのものになったというのが、成熟したと表現される理由でしょう。
このようにKubernetes本体の成熟さが示された一方で、Kubernetesをとりまくエコシステムの発展も目立ってきました。
2018年7月には、Kuberntesを基盤にサーバレスコンピューティングを実現するためのソフトウェア「Knative」をGoogleがオープンソースとして公開。
Knativeは、コンテナをサーバレス環境で実行可能にするGoogleの新サービス「Serverless containers」の基盤になっているほか、Pivotal Function ServiceやGitLab ServerlessなどGoogle以外のサーバレスコンピューティング環境の基盤としても採用され始めており、Kubernetesを基盤としたサーバレスコンピューティング環境のカギを握るソフトウェアとみられています。
2018年10月には、独自のコンテナオーケストレーション機能「Diego」を実装していたPaaS型クラウド基盤ソフトのCloudFoundryが、Diegoの代わりにKubernetesを利用可能にする「Eirini」プロジェクトを発表。PaaSにおいてもKubernetesが基盤として欠かせないものになっていく方向性が示唆されました。
2019年3月にRed Hatが開始した「OperatorHub.io」は、Kubernetesの機能を拡張してアプリケーションの運用管理を支援する「Operator」と呼ばれるソフトウェアのマーケットプレースです。
これによってKubernetes上でさまざまなソフトウェアの利用が促進されることでしょう。
仮想化ハイパーバイザーによるサーバ仮想化が普及したときに登場したソリューションの1つが、仮想化ハイパーバイザーとサーバを統合したコンバージドインフラストラクチャ/ハイパーコンバージドインフラストラクチャでした。
コンテナ型仮想化の普及により、それと同じことが起きています。米Diamantiは、DockerとKubernetesに最適化した統合サーバを販売しており、2019年11月には日本でも本格展開が発表されています。
仮想化の普及と進化はソフトウェアのレイヤーだけでなく、プロセッサやネットワーク、ストレージなども含めたシステムとしての最適化とともに行われてきました。
コンテナ型仮想化とオーケストレーションのソフトウェアレイヤーにおける標準化がほぼ落ち着いてきたと見える現在、これに最適化されたシステムが今後さらに登場し、進化、普及していくことになるのでしょう。
このようにDockerに代表されるコンテナ型仮想化とそのオーケストレーションを実現するKubernetesの存在を前提としたエコシステムの発展は、今後さらにペースを増して続くはずです。
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