レッドハットは国内で「OpenShift」を広められるか? 日本独自のパートナー戦略から見えてくる、課題と狙い(1/3 ページ)
レッドハットが、新たなパートナープログラム「OpenShift Managed Practice Program」を発表。国内のパートナー企業の一部が、「Red Hat OpenShift」を用いたコンテナ環境を、各社のクラウドサービスからマネージドサービスとして提供できるようにする取り組みだ。この戦略から見えてくる、同社の日本市場における課題と狙いを、ITジャーナリストの谷川耕一氏が解説する。
レッドハットはこのほど、新たなパートナープログラム「OpenShift Managed Practice Program」を発表した。これは、国内のパートナー企業の一部が、「Red Hat OpenShift」(以下「OpenShift」)を用いたコンテナ環境を、各社のクラウドサービスからマネージドサービスとして提供できるようにする取り組みだ。ビジネス的な側面ではなく、技術面での支援が主となる。米Red Hatの方針の一環ではなく、日本法人が独自で展開する。
参加するパートナー企業は、伊藤忠テクノソリューションズ、NTTコムウェア、NTTデータ、NEC、日本アイ・ビー・エム、野村総合研究所、日立、富士通。OpenShiftのライセンスを販売し、導入支援を行うパートナー企業の中から、自社でマネージドサービスを提供できる企業をよりすぐった印象だ。
左からレッドハット 望月弘一社長、伊藤忠テクノソリューションズ 松丸達也氏、エヌ・ティ・ティ・コムウェア 関洋介氏、エヌ・ティ・ティ・データ 松浦誠氏、NEC 上坂利文氏日本アイ・ビー・エム 伊藤昇氏、富士通 金重憲治氏、日本マイクロソフト 佐藤久氏、レッドハット 金古執行役員
今回のプログラムに参加するパートナーに対し、レッドハットは自社の「Site Reliability Engineering」(=SRE、ITシステムの運用管理を担うエンジニア)チームのスキル、ノウハウをパートナー企業のSREと共有する。
具体的には、年に2回の技術ワークショップを行い、Red HatのSREのノウハウとスキルをパートナーのSREと共有する他、日常的に双方のSREがコミュニケーションを取れる場も用意する。また、パートナーのマネージドサービスの利用促進に向け、各社をサポートする情報の発信もレッドハットから行う。
米Red Hatは、米IBMに買収されて以降も、OpenShiftを核にした「オープン・ハイブリッドクラウド」戦略を曲げず、「IT業界を変革する」との目標を掲げている。ただ、OpenShiftを活用した業界の変革は自社だけで実現できるものではないため、強力なパートナーとのエコシステムが必要だと経営層は考えているようだ。
レッドハットの望月弘一社長は、同パートナープログラムの記者発表会で「OpenShiftの上で利用できるパートナーのソリューションを拡充し、多様化する顧客企業の要求に応えていく必要がある」と強調した。
Red Hatの戦略は、グローバルではある程度成功している。IBMによる買収前ではあるものの、米調査会社のIDCは、2017年のグローバルにおけるコンテナ・インフラストラクチャ・ソフトウェアのシェアで、Red Hatは30.1%で1位との調査結果を発表している。
ただ、日本ではまだまだ、本番システムの運用でコンテナ環境を活用する例は多くない。
関連記事
- 「IBMに買収されたが、これからも独立した立場だ」――Red Hat幹部、ブレない戦略語る
米Red Hatの経営陣が、都内で方針説明会を開催。「IBMに買収されたが、これからも独立した立場だ」とブレない姿勢を示した。今後も「オープン・ハイブリッドクラウド戦略」に注力する方針だ。 - Red Hatを買収したIBMの、新たなハイブリッド/マルチクラウド戦略とは?
Red HatでIBMは何を手に入れ、それをどのように展開してきたのか。そしてその先は? キーパースンに聞いた。 - 「なぜクラウドなんだ」「今までのやり方を変えないで」――反発乗り越えAWSなど導入 京王バスを変えた男の交渉術
京王電鉄の虻川勝彦氏(経営統括本部 デジタル戦略推進部長)が、12月10日に開催されたイベント「NetApp INSIGHT 2019 TOKYO」に登壇。京王バスに出向していた当時に、周囲に反発されながらもクラウド導入を推進した際の交渉術を語った。コツは「止まっても謝れば済む領域から導入する」ことだという。 - ドコモの「IDaaS」導入秘話 「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司との戦い
企業では現在、認証サービスにクラウド型の認証基盤「IDaaS」(Identity as a Service)を利用する取り組みが活発化している。NTTドコモは、IDaaSベンダーの米Auth0に出資し、同社のサービスを「docomo sky」の認証基盤に採り入れている。その裏側で開発担当者は、「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司を説得していたという。 - 33自治体で「一部データが復旧不能」に――日本電子計算のIaaS障害、いまだに復旧見通し立たず
日本電子計算が提供する自治体向けIaaS「Jip-Base」で障害が発生し、全国53の自治体と団体で影響が出ている件について、同社は記者会見で「33の自治体で一部のデータが復旧できない状態にある」と明らかにした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.