レッドハットは国内で「OpenShift」を広められるか? 日本独自のパートナー戦略から見えてくる、課題と狙い(2/3 ページ)
レッドハットが、新たなパートナープログラム「OpenShift Managed Practice Program」を発表。国内のパートナー企業の一部が、「Red Hat OpenShift」を用いたコンテナ環境を、各社のクラウドサービスからマネージドサービスとして提供できるようにする取り組みだ。この戦略から見えてくる、同社の日本市場における課題と狙いを、ITジャーナリストの谷川耕一氏が解説する。
日本企業ではコンテナ活用は進んでいない
日本企業でコンテナ活用が進まない理由は、エンタープライズグレードの可用性や信頼性が担保できるのか、オンプレミスと同様なセキュリティやコンプライアンスを確保できるのか――と懸念する声があるからだ。さらに、コンテナ環境を本格的に運用するための人材確保にも課題感を持つ企業は多い。
一部の企業では、コンテナやKubernetesを、アプリケーション開発エンジニアが「試してみる」レベルでの利用は進んでいる。だが、コンテナやKubernetesを使いこなせる人材を集め、それらの活用を始めているのは、一部のクラウドネイティブなアプリケーション開発を行っている先進的な企業のみだ。一般的な企業が、アプリケーションの開発、稼働環境として、オープンソースベースのDockerやKubernetesを導入・運用するのは簡単ではない。
OpenShiftは、Kubernetesを利用するコンテナ環境をより使いやすくするための各種機能を追加し、エンタープライズレベルのクラウド・プラットフォームとして利用できるようにする――というサービスだ。だが、コンテナの活用が進んでいない日本企業では、このサービスの本番環境への導入がなかなか難しいのではないか、というのが筆者の見立てだ。
内製化が進まぬ日本では「マネージドの仕組みが必要」
OpenShiftの導入が先行する米国などでは、ITシステムの開発、運用は内製が一般的だ。内製で行ってこそ、コンテナ環境での迅速なアプリケーション開発と柔軟な運用体制が生き、企業のデジタル変革につなげられる。先行している企業は、Red Hatの手を借りつつも、自分たちでオンプレミスにOpenShiftの環境を構築し、継続的なアプリケーション開発、運用を自らのエンジニアリソースで実施しているところも多い。
一方の日本では、ITシステムの内製化が進んでいない。多くの企業が開発の大部分をSI企業などに依頼し、運用管理もアウトソーサーに依存する。こういった体制では、迅速で柔軟なアプリケーション開発や更新は望めない。内製化が進まないことは、日本がデジタル変革に出遅れている原因の1つだろう。
こうした状況では、SI企業などが率先してOpenShiftを選ばなければ、日本企業はなかなかOpenShiftを活用したアジャイルでDevOpsな体制には移行できない。せいぜいPoCの実施で終わってしまうのが関の山だ。
レッドハットは、こういった状況を打開し、「オープン・ハイブリッドクラウド戦略」を推進するために、OpenShift Managed Practice Programを立ち上げたとみられる。
今回のパートナープログラムでは、OpenShiftのマネージドサービスを提供できるベンダーを集め、提供を支援することで企業でのOpenShiftの本番導入を後押しする。コンテナ環境の品質や安全性に対する懸念はOpenShiftの品質で払拭(ふっしょく)し、人材やスキル不足に対する懸念はパートナーによるマネージドサービスで軽減する――というわけだ。
同社の金古毅執行役員(パートナー・アライアンス営業統括本部長)は、記者発表会で「日本の環境を考えた上では、マネージドの仕組みが必要であり、特にこういったプログラムが求められると判断した」と語っていた。
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