IBM、昨年比で性能2倍の量子コンピュータ「Raleigh」発表 2030年までの実用化に一歩前進
米IBMは、量子コンピュータ「Raleigh」(ローリー)を発表した。量子コンピュータの性能指標「量子体積」で、2019年に発表したマシンの2倍の性能に達したという。
米IBMは1月8日(現地時間)、量子コンピュータ「Raleigh」(ローリー)を発表した。同社が量子コンピュータの性能指標に掲げている「量子体積」(QV)で、2019年に発表したマシンの2倍の性能に達したという。
ローリーは28量子ビットのシステム。2019年に発表した、1量子ビットのコヒーレンス時間(量子性を保って計算できる時間)を延ばす技術をローリーに適用したところ、量子ビット数の他にエラー率やコヒーレンス時間などを総合的に考慮した量子体積という指標で、同社のマシンとしては最大の32を達成したとしている。
同社は19年9月に、それよりも量子ビット数の多い53量子ビットのシステム「Rochester」(ロチェスター)を発表したが、ゲート操作のエラー率の分布が10%程度まであり、量子体積は公開していない。同年1月8日(ちょうど1年前)に発表した量子コンピューティングプラットフォーム「IBM Q System One」のQVは16だった(当時20量子ビット)。
IBMが開発する各量子コンピュータシステムのCNOTゲートのエラー率の分布 下の新しいシステムほどエラー分布が小さく抑えられている。各システム名は都市名から来ており、デバイスの開発段階には鳥の名前(図中のシステムは“ペンギン”ファミリー)を名付けている
IBMは量子コンピュータの性能を年々2倍に増やしていくロードマップを描いており、17年のQV4から、18年のQV8、19年にはQV16を達成。今回も目標をクリアした。今後もロードマップ通りに開発が進めば、2030年までに量子コンピュータの実用化が見込めると同社は考えている。
同社は20年中に東京大学と連携して日本に量子コンピュータを設置すると、19年12月に発表している。
IBMの量子コンピュータは量子ビットに超電導回路を採用しており、19年10月に「量子超越性」を実証したと発表した米Googleの量子コンピュータと同様の方式。従来のマシンが解くのに1万年かかる問題をGoogleの量子コンピュータは3分20秒で解けたとするGoogleの主張に対し、IBMは従来のマシンでも約2.5日で解けると反論していた。
関連記事
- 量子コンピュータの「ある計算でスパコン超え」 4年前の「PCより1億倍速い量子コンピュータ」との違いは?
Googleが示した「量子超越性の実証」では、量子コンピュータがスパコンよりもある問題を圧倒的に速く解いたといいます。一方、GoogleとNASAは4年前に「PCより1億倍速い量子コンピュータ」というものも発表していました。何が違うのでしょうか。 - NECがアニーリング方式量子コンピュータに傾倒する理由 国産マシンは23年に実用化
日本電気は量子コンピュータに関する活動を推進する部門「量子コンピュータ推進室」を20年1月に設置する。「量子アニーリング方式」の量子コンピュータを開発に向け、先駆者のカナダD-Wave Systemsと協業を検討。NEC製の古典マシンを使ったアニーリングのシミュレーションも。NECが量子アニーリングに傾倒する理由とは。 - IBMの量子コンピュータ、日本上陸へ 東大が旗振り役、「オールジャパン体制で量子技術に取り組む」
IBMが日本に量子コンピュータを設置する。東大との連携で、「東京大学量子イニシアティブ構想」の第1弾。IBMの量子コンピュータが設置される国としては、米国、ドイツに続き3番目。 - 「量子版ムーアの法則」は実現するか 今の量子コンピュータは「さながら1950年代」
科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターの嶋田義皓フェローが、量子コンピュータの現状や、実用化が見込まれる時期を解説した。 - IBM、量子コンピュータ「IBM Q System One」を商用化したと発表
IBMが“世界初の商用統合量子コンピュータ”と謳う「IBM Q System One」を発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.