19年のクラウドインフラ市場、AWSの首位揺るがず 世界シェアの約3割占める Azureが約2割で猛追
Canalysが、2019年の世界クラウドインフラ市場を調査した結果を発表。ユーザー企業がクラウドインフラに支出した金額は、前年比37.6%増の約1070億ドル(約11兆7600億円)に拡大した。その約3割をAWS、約2割をAzureが占めた。
シンガポールの調査会社Canalysはこのほど、2019年の世界クラウドインフラ市場(支出額ベース)に関する調査結果を発表した。調査によると、19年にユーザー企業がクラウドインフラに支出した金額は、前年比37.6%増の約1070億ドル(約11兆7600億円)に拡大した。その多くを、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azure(Azure)が占めた。
19年のシェア首位はAWS。ユーザー企業からの支出額は約346億ドル(約3兆8000億円、前年比36.0%増)で、全体の32.3%(前年比0.4ポイント減)を占めた。Canalysは「AWSをオンプレミス環境で実行できる『AWS Outposts』のリリースにより、今後もさらなる成長が期待できる」とみている。
シェア2位はAzure。支出額は約181億ドル(約1兆9900億円、63.9%増)で、全体の16.9%(2.7ポイント増)を占め、AWSとの差を縮めた。20年1月にサポートを終了した「Windows Server 2008」のワークロードをAzureに移行する案件が多かったという。
3位はGoogle Cloud Platform(GCP)。支出額は約62億ドル(約6800億円、87.8%増)と大きく伸長し、全体の5.8%(1.6ポイント増)を占めた。パートナー企業との連携強化が大幅な売上増につながったという。
4位はAlibaba Cloud。支出額は約52億ドル(約5700億円、63.8%増)に拡大し、全体の4.9%(0.8ポイント増)を占めた。中国市場の成長に伴い、同社の売り上げも伸びたという。
5位以下の企業のシェアは、合計で40.1%(4.7ポイント減)。シェアは減少したが、市場全体の成長に伴い、支出額は430億ドル(約4兆7300億円、23.3%増)に増えた。
Canalysは、現在のクラウドインフラ市場について「異なるクラウドベンダーの強みを組み合わせた、マルチクラウド環境を構築する企業も多くなっている」と指摘。20年のユーザー企業からの支出額は、1140億ドル(約12兆5000億円、19年比32.0%増)に達すると予測している。
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