激務の建設業界をAWSとロボットで変える――竹中工務店が新施策 目指すは「週休2日」の実現
竹中工務店が、クラウド型システム「建設ロボットプラットフォーム」を発表。AWSがベースで、建設用ロボットの遠隔操作や遠隔監視、自律走行の経路設定などができる。クラウドとロボットの活用によって、職人の稼働時間を減らし、目標とする週休2日制の実現を目指す。
竹中工務店は2月14日、建設用ロボットの遠隔操作や遠隔監視、自律走行の経路設定などができるクラウド型システム「建設ロボットプラットフォーム」を発表した。建設現場でのロボット活用の利便性を高め、工期の短縮、職人の負担軽減、人件費の削減を加速する狙い。当初は自社のみで利用する予定で、6月まで試験運用を行い、2020年度中に本格運用を始める計画だ。結果を踏まえ、同業他社への展開を検討するという。
働き方改革が進んでいる現在も、建設業界では長時間労働がまん延しており、職人が土曜日も働くのが一般的。竹中工務店はクラウドとロボットの活用によって、職人の稼働時間を減らし、目標とする週休2日制の実現を目指すという。
AWS Robomakerがベース
建設ロボットプラットフォームは、Amazon Web Services(AWS)のロボティクス向けサービス「AWS RoboMaker」がベース。現場社員は専用画面を通じて各ロボットを操作できる他、バッテリー残量や故障の有無を確認できる。
自己位置の推定と地図作成を行う「SLAM」を搭載したロボットや、カメラを備えたロボットを現場に配置した場合は、地図データや画像をクラウドに集約し、設計図と照らし合わせることで、建設作業の整合性や進行度を確認できる。
建物の3Dモデルと、施工順序・材質・コストなどの情報を融合した「BIM」(Building Information Modeling)データを基に、ロボットが自律走行する範囲や経路を設定することも可能だ。
竹中工務店の永田幸平氏(西日本機材センター 機械化施工推進グループ 課長)は「従来は人力で1週間かかっていた3D地図の生成作業を、建設ロボットプラットフォームを導入することで5分に短縮できる。人件費削減なども期待できる」と語った。
ロボット活用を推進も、別の負担が発生
竹中工務店は、少子高齢化に伴う職人の人手不足に備え、以前から建設現場でのロボット活用に注力。清掃、搬送、溶接、高所作業などを担うロボットを開発・使用してきた。米Boston Dynamicsが開発した四足歩行型ロボット「SpotMini」に建設現場を巡回させる実証実験に取り組んだ実績もある。
その一方で、ロボットの台数や種類の増加に伴い、社員による保守・運用・管理の負担が増えていた。ロボットが自律走行するルートを指定する際は、現場にカラーコーンや磁気テープ、QRコードなどを配置し、動作範囲を制限する手間も生じていた。
新システムの導入により、ロボット管理の一元化や、画面上でのルート指定を実現し、こうした負担の軽減を目指す。夜間に自動でロボットを動かし、工事を進めるといった運用も理論上は可能であるため、本格運用を検討する。
週休2日制の実現目指す
竹中工務店の松尾享氏(生産本部 生産企画部 部長 技術担当)は「現状では、週休2日制を達成し、4週間のうち8日間を休みにするのはハードルが高い。職人の残業を減らすには、日中の作業効率を高め、夜間に単純作業を任せるなど、ロボットを適材適所で活用する必要がある」と強調。生産性向上と省人化に向け、今後も先進技術を活用していくとした。
関連記事
- 「君、今日からクラウド担当ね」 未経験者が1人で始めた、ファミマのAWS移行の舞台裏
「AWS Summit Tokyo 2019」のセッションに、ファミリーマートでクラウド移行の責任者を務める土井洋典さんが登壇。土井さんは、前任者が突然退職したため、ある日突然上司からクラウド担当を任された経験を持つ。たった1人でのスタートだったというが、どうやってAWS移行を成功させたのだろうか。 - 「なぜクラウドなんだ」「今までのやり方を変えないで」――反発乗り越えAWSなど導入 京王バスを変えた男の交渉術
京王電鉄の虻川勝彦氏(経営統括本部 デジタル戦略推進部長)が、12月10日に開催されたイベント「NetApp INSIGHT 2019 TOKYO」に登壇。京王バスに出向していた当時に、周囲に反発されながらもクラウド導入を推進した際の交渉術を語った。コツは「止まっても謝れば済む領域から導入する」ことだという。 - ソニー銀行、勘定系システムをAWSに移行へ 大阪リージョン開設を機に決断、クラウドオンリーな銀行に
ソニー銀行が、勘定系を含むほぼ全てのシステムをAmazon Web Services(AWS)に移行する方針を発表。運用に要するコストや時間をカットし、業務を効率化する狙い。同行はクラウド活用を進めており、2013年から社内システムや周辺系システムをAWSに段階的に移行していた。 - ドコモの「IDaaS」導入秘話 「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司との戦い
企業では現在、認証サービスにクラウド型の認証基盤「IDaaS」(Identity as a Service)を利用する取り組みが活発化している。NTTドコモは、IDaaSベンダーの米Auth0に出資し、同社のサービスを「docomo sky」の認証基盤に採り入れている。その裏側で開発担当者は、「認証の仕組みは簡単」「自社開発できるでしょ?」と説く上司を説得していたという。 - 近畿大、全学生に「Slack」導入へ 絵文字もOK、教職員と気軽にやりとり目指す
近畿大学が、全学生に「Slack」を導入する計画を発表。2020年4月に830人の学生へ導入。対象範囲を順次広げていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.