先日、知人と話していて新型コロナウイルス感染症の影響でトイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品が店頭で不足しているという話題になりました。理由が分からないと言うと、「マスクと同じ紙を使っているからでしょ」という予想外の返事。それ、ダウトです。
家庭用マスクは現在、その90%以上が不織布と呼ばれる「織っていない布」でできています。確かに不織布の中には紙の原料となるパルプを使用したものも存在しますが、家庭用の使い捨てマスクの場合はほぼ化学繊維。知人といくつかのマスクのパッケージを確認したところ、原材料欄にはすべてPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)と書いてありました。
TwitterなどのSNSで検索すると、トイレットペーパーなどの紙製品が不足するというデマには、「マスクと同じ原料を使っていて、マスクのほうに原料をとられている」や「トイレットペーパーを生産していた中国の工場が止まった」など、複数のパターンがあることが分かりました。後者についても日本の紙製品は90%以上が国産のため、仮に本当だったとしても深刻な影響はありません。
全国の製紙業者が加盟する日本家庭紙工業会は2月28日付で「トイレットペーパー、ティシューペーパーの供給力、在庫は十分にあります」というお知らせをWebサイトに掲載しました。これらの商品はほとんど国内工場で生産されていて、現在も通常通りに生産と供給を行っているそう。原材料も中国に依存しておらず、製品在庫も十分にあるため、今は店頭になくても物流次第ですぐに補充されるとしています。
震災や水害などの場合と異なり、物流網がしっかり機能している今、国内で作っている紙製品が供給不足になる心配はありません。にもかかわらず、デマを信じた人、デマと分かっていてもその影響を危惧した人たちが買いだめに走り、店頭から商品がなくなってしまいました。これでは本当にトイレットペーパーを切らしてしまったお宅が困ります。
日頃から「デマには気を付けている」と話していた知人も、自分が詳しくない分野の情報のためか、なぜか疑問を持たなかったそう。そして「リツイートとかして恥をかく前に分かって良かった」と言い、窮地に陥っていたわが家にトイレットペーパーを譲ってくれました。
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