VMware、Kubernetesレイヤーでマルチクラウドを実現する「VMware Tanzu」正式リリース
米VMwareが、「VMware Tanzu」の正式リリースを発表。Kubernetesの導入から展開までをカバーするツールで、日本時間3月11日から提供を始める。同ツールは、同社の新しいマルチクラウド戦略の核になりえる。
この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「[速報]Kubernetesレイヤでマルチクラウドを実現する「VMware Tanzu」正式リリース」(2020年3月11日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。
米VMwareは3月10日(日本時間3月11日未明)、オンラインイベント「App Modernization in a Multi-Cloud World」を開催。Kubernetesの導入から展開までをカバーする「VMware Tanzu」の正式リリースを発表しました。
Tanzuは「Tanzu Kubernetes Grid」「Tanzu Mission Control」「Tanzu Application Catalog」などで構成されます。
Tanzu Kubernetes Gridは、VMwareによるKubernetesディストリビューション。オンプレミスやクラウドへKubernertesを導入することで、Kubernetes環境を実現します。
Tanzu Mission ControlはKubernetes環境の運用管理機能を提供します。VMwareが提供するKubernetes環境だけでなく、Amazon EKS、AzureのAKS、GoogleのGKEなど他社クラウドのKubernetes環境も統合可能です。
Tanzu Application Catalogは、Kubernetes環境用にパッケージされたソフトウェアのカタログを提供するもの。企業はこのカタログからソフトウェアを選び、Kubernetes環境へすぐ展開できます。また、ソフトウェアベンダーはこのカタログ用にソフトウェアをパッケージすることで、Kubernetes環境を運用するさまざまな企業向けに提供することが可能になります。
VMware Tanzuは同社の新しいマルチクラウド戦略の核になる
VMwareはvSphereを核とするVMware Cloud環境を、VMware Cloud on AWSをはじめ、Azure、Google Cloud、IBM Cloud、Oracle Cloudなどさまざまなクラウドへ展開することによって、オンプレミスでのVMware環境とシームレスにつながるマルチクラウド環境を実現してきました。
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これによりオンプレミスやさまざまなクラウドはVMwareソフトウェア群によって抽象化され、アプリケーションやデータのポータビリティの実現や運用管理の統一が実現されています。
クラウドベンダーにとってVMware Cloud環境の採用は、自社クラウドがVMwareにより抽象化されて独自性を失うというデメリットがある一方、オンプレミスのvSphere環境とのシームレスな統合が可能になることにより、膨大なオンプレミスの顧客層にアプローチしやすくなるメリットがありました。
このメリットがあるために、さまざまなクラウドベンダーがVMware Cloud環境を採用したのであり、VMwareは同社の絶対的な強みであるオンプレミスにおけるvSphereの強さをうまく利用して、クラウド市場におけるVMware Cloud環境の普及に成功。クラウド市場における同社独自の地位を得ました。
VMware Tanzuは、このVMwareのマルチクラウド戦略をKubernetesのレイヤーへと発展させるものです。
vSphereにKubernetesを統合することで、オンプレミスでvSphereを利用している既存の顧客をできるだけ早くKubernetes環境へと持ち上げる一方、クラウドベンダーが提供しているVMware Cloud環境でもKubernetesの普及を促進。
そのうえでVMware Cloud環境以外のKubernetes環境であっても、Tanzu Mission Controlでまとめて運用管理を行えるようにしたことで、あらゆるKubernetes環境をTanzuの管理の下で抽象化できるようになりました。
そして、あらゆるKubernetes環境に対して、Tanzu Application Catalogによるソフトウェア配布が実現されれば、クラウド市場全体におけるKubernetes環境でのソフトウェア流通市場をおさえることができるかもしれないのです。
VMwareがKubernetesのコンサルティング会社であるHeptioを買収し、さらにクラウドネイティブなソフトウェア群やサービスを展開してきたPivotalも買収し、vSphereをKubernetes対応にし、そしてTanzuソフトウェア群を展開する背景には、これまでオンプレミスやクラウドにおいて重要なソフトウェア基盤であった仮想化ハイパーバイザーに次いで、これからはKubernetesがオンプレミスでもクラウドでも重要なアプリケーションの実行基盤となると同社が考えるからでしょう。
それをいち早く抑えることが現時点で同社の重要な戦略であり、Kubernetes対応したvSphereに加えて、VMware Tanzuはそのための戦略的製品群であるといえます。
VMware Tanzuは本日から正式版が提供開始されます。
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