「青軸」「茶軸」だけじゃない 自作キーボードで多様な進化を遂げた「互換キースイッチ」たちとその先にある改造の“沼”:ハロー、自作キーボードワールド 第4回(2/3 ページ)
キーボードの打鍵感の要となる「キースイッチ」が、自作キーボードの世界で多様な進化を遂げていることを今回は紹介していく。
Zealiosシリーズ
ZealiosシリーズはカナダZeal Generationが開発し、Gateronが製造するキースイッチだ。タクタイルタイプの「Purple Zealios」と静音タイプの「Blue Zilent」が有名。これらは紫色または青色の軸を持つキースイッチで、独特のタクタイル感とグラつきの少ない工作精度の高さに定評がある。
その分の価格は通常のGateronシリーズより高いが、完成度が高く初心者にもおすすめできるスイッチだ。同系統のスイッチに鮮やかなターコイズブルーの軸を持つリニアスイッチのTealiosや、淡いピンク色の静音リニアスイッチのRoseliosとSakuriosがある。
Input Club Hako
Kailh BOXスイッチをベースに滑らかなタクタイル感を目指した、米Input Club開発のキースイッチ。タクタイル感が強かったり荷重が重めだったりするなど人を選ぶスイッチだが、面白いキースイッチの一つだ。
NovelKeys Cream
キースイッチを構成する軸とハウジング(スイッチの外装)に、摺動性(滑りやすさ)に優れたPOMと呼ばれるプラスチックを用いた、全体がベージュのリニアスイッチ。プラスチック自体が特殊なため、打鍵感もユニークだ。製造はKaihua Electronics。
Gateron Ink
2019年に販売を開始した、Gateronの中でも新しいキースイッチ。軸とハウジングが同じ色に着色されている見た目が特徴。クリッキースイッチの「Ink Blue」を除くと、「Ink Red/Ink Yellow/Ink Black」の3種はリニアスイッチで、ラインアップがやや特殊だ。
薄いキーボードを作りたいあなたへ
Cherry MX系ではないが、「ノートPCのような薄型のキーボードを作りたい」と思っている人にもおすすめできるスイッチもある。Kaihua Electronicsが製造する「Kailh Low Profile」スイッチ(通称Kailh Choc)だ。Cherry MX系とは全く互換性が無く、キーキャップの選択肢も少ないが、Cherry MX系に比べて背が低いことから薄型キーボードの自作に用いられている。
キースイッチ沼の深淵:「改造」
ただでさえ選択肢が多い(ここで紹介したのはほんの一部にすぎない)キースイッチだが、キーボードコミュニティーではキースイッチを分解して手を加える改造も盛んに行われている。
一つのキーボードに何十個も取り付けるキースイッチを、一つ一つ改造していくのはかなり根気のいる作業で、傍から見ていると「一体何をしているのか理解できない」と思うかもしれない。キースイッチの改造で何を変えられるのか、“深淵”の入り口を簡単に案内しよう。
ルブ(Lube, Lubrication)
ルブとは、スイッチ押下時にこすれる部分に潤滑油(ルブ)を塗る行為のこと。摩擦が少なくなるため、スムーズな上下動や静音化を期待できる。油といってもサラダ油などではなく、工業用の高級なものを用いる。スイッチと潤滑油の組み合わせで打鍵感が変わる。
ちなみに、キースイッチによっては製造時に潤滑油が塗布されていることもあり、そういったスイッチは「ファクトリールブ」と呼ばれている。超音波洗浄機でこれを除去して新たに潤滑油を塗布する猛者もいるとか……。
バネ交換
文字通り、スイッチ標準のバネを交換すること。交換用として入手できるバネには荷重が異なるものの他、「プログレッシブスプリング」と呼ばれるような非線形バネ(押し込み量によって荷重が変化する特殊なバネ)もある。重さでバリエーションがある「Zealios」シリーズのようなキースイッチもあるが、そうしたスイッチ以外で荷重を変えたい場合などに用いられる。
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