新型コロナの「接触追跡」アプリ、独はApple&Google方式、英豪は中央集権方式
新型コロナウイルス感染症拡大防止のための濃厚接触通知アプリを各国が公開し始めている。接触したかどうかのマッチングをサーバ側(中央集権方式)で行うかスマートフォン側(分散方式)で行うかで分かれており、ドイツはAppleとGoogleが取り組む分散方式を採用する一方、英国とオーストラリアは中央集権方式だ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続く中、各国政府が接触追跡アプリの開発を進めている。オーストラリア政府は4月26日(現地時間)にアプリを公開した。
接触追跡アプリとは、スマートフォンの機能を利用して感染者と過去に濃厚接触した可能性のある人にその可能性を知らせ、適切な行動を求めるというもの。シンガポールや韓国が既に提供しているが、これらは接触したかどうかのマッチング作業を中央のサーバで行うため、プライバシーに関する懸念もある。
米Appleと米Googleが10日に発表した新たな「濃厚接触通知」システムは、接触データのマッチング作業をユーザーのスマートフォン内で行う分散方式を採用し、他にもスマートフォン同士が交換する識別子を暗号化するなど様々なプライバシー保護の工夫がなされている。
オーストラリアは中央集権方式
オーストラリアの公衆衛生当局である保健省は26日、独自の接触追跡アプリ「COVIDSafe」をAppleおよびGoogleの公式アプリストアで公開した。マッチングプロセスは中央集権方式で、さらにアプリをダウンロードする際、氏名、携帯電話番号、郵便番号を入力する必要がある。
保健省は公式ブログで、国民のプライバシーは保護し、アプリの情報へのアクセスは極力制限すると説明した。グレッグ・ハント保健相はアプリ公開の翌日、189件ダウンロードされたとツイートした。
ドイツは分散方式に方針切り替えで公開に遅れ
ドイツの公衆衛生当局である連邦保健省のイェンス・シュパーン保健相は4月26日、公共放送局ARDのインタビューで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のための接触追跡アプリの公開には数週間かかる可能性があると語った。
独政府は当初、中央サーバ保存方式のアプリを4月中旬に提供する方向で開発を進めていたが、大規模な批判を受けたため、方針を分散方式に変更したとシュパーン氏は語った。
米Reutersによると、Appleがドイツの中央サーバ方式アプリを拒否したため、方針を変更せざるをえなかったという。独政府のアプリもiPhone版はAppleのApp Storeでリリースする必要がある。
シュパーン氏は「過去数週間に開発されたものを基に」開発すると語った。この「もの」がAppleとGoogleが提供するAPIを指すのかどうかには触れなかった。
英国は中央集権方式
英国の公衆衛生当局である保健省国民保健サービス(NHS)は24日、公式ブログで、向こう数週間中に接触追跡アプリを公開すると発表した。その発表では「AppleとGoogleと協力して」開発しているとしているが、英BBCは27日、NHSのアプリは接触のマッチングプロセスをサーバ側で行う中央集権方式で、AppleとGoogleが提案したAPIとは異なるモデルだと報じた。
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