新型コロナ禍は“ガラケーおじさん”を進化させるのか?:マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/3 ページ)
新型コロナウイルスによってテレワークをする人が増えている。しかし、全社的なテレワーク体制に移行できない企業も存在する。会社間のITリテラシー格差の問題をどう解消すればいいのだろうか。
生き残るのは「変われる会社」
説明するまでもなく、トヨタ自動車は日本を支える自動車産業の雄であり、売上高や株式時価総額でも2位以下に圧倒的大差をつけています。書店には「トヨタの〇〇」というビジネス書が並び、経済誌はネタに困ればトヨタを特集しています。権威に弱く、日本のものづくりを信奉するガラケーおじさんにとってトヨタの影響力は絶大なので、トヨタを引き合いに出すと、右に倣えで「われわれもトヨタを見習おう」と納得してくれます。ここは横並びを意識する日本人の同調圧力を利用しましょう。
このような場面の説得材料として米国など海外事例を持ち出す場合もありますが、避けるべきでしょう。ガラケーおじさんには「日本は特殊だから」「日本では通じない」と断られるのが常です。しかし「日本」「製造業」「地方(愛知県)」であり、名実ともに日本一のトヨタ自動車なら効果はバツグンです。
日本一の企業が変革することは、他にも良い影響があります。テレワークやペーパーレス(ハンコ・書類の廃止)を訴えても、上の立場にある大手企業が変わらなければ取引相手は従わざるを得ません。
いわば藤波辰爾社長時代における、新日本プロレスとアントニオ猪木氏の関係です。立場が強い発注元が立場が弱い下請けに“要請”するのは容易であり、上に言われれば従うのが日本の伝統です。
日本産業界の頂点に立つトヨタ自動車が、「これからはソフトウェアが大事」と標榜(ひょうぼう)すれば、世論も変わってくるでしょう。この取組みによってソフトウェアの重要性が認知されることを期待しています。
横並びと権威に弱いガラケーおじさんに対してITの重要性を認識してもらい、リテラシー向上に取り組みましょう。ガラケーおじさんを「スマホおじさん」に進化させるのは、まだギリギリで間に合うタイミングです。
いつまでもガラケーおじさんに合わせていれば、会社も業務も変わりません。危機的状況に陥っても生き残れるのは「強い会社」ではなく「変われる会社」です。業績不振に陥っても旧来の方法に固執して、「会社が変われたのは外国企業に買われた後でした」では意味がありません。だからこそガラケーおじさんのままであることが問題です。「2025年の崖」で危惧されているように、いつまでも既存の業務システムやパッケージを使える保証はありません。いつかは新しいツールを導入して、社内システムは刷新されます。
そうなった時に「会社が指定するITツールを使えなければ仕事ができない」「ツールを使えず仕事ができない人材はリストラ」という事態を避けるべく、企業と社員において継続的なリテラシー向上が必要になっています。
アフターコロナの時代
新型コロナウイルスによって、人と人とのつながりが断絶されるのでしょうか。実際には断絶を回避するためのITツールによって、企業間のリテラシー格差が浮き彫りになりました。危機的状況で露呈した弱点により、人と組織は変わらざるを得ません。かつての危機状況だった東日本大震災でも、「BCP対策(緊急時における事業継続性)」「ディザスタ・リカバリー(災害からの復旧)」の重要性が叫ばれましたが、変われた企業は一部です。こうした状況を変えなければ、新型コロナウイルスが終息しても、ITリテラシーによる断絶が残るでしょう。
しかしIT活用を支援する企業や情報やエンジニアは東京に集中にしており、東京と地方、IT企業とIT企業以外における格差は確実に存在します。東京のIT企業が地方へ出向くには、時間とリソースや費用における負担も大きいです。
新型コロナウイルスによるテレワークやオンライン会議の推進は、ガラケーおじさんに起因した問題を是正する契機になってほしいです。かつては地方の某企業が「画面越しに打ち合わせは失礼だ。我が社の工場まで来るのが当然」と、毎週東京にある会社の担当者を呼びつけていました。そして新幹線と在来線とタクシーを乗り継いで工場まで出向くと、会議室でテレビ会議用のモニターとスピーカーを目にするという光景は、新型コロナによって無くなってほしいです。
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