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「引用だから大丈夫」「昔話ならOK」――“読み聞かせ動画”のワナ(2/3 ページ)

新型コロナウイルス感染症の流行に伴う休校が長引く中、動画投稿サイトで公開されている読み聞かせ動画に注目が集まっている。子守に役立つ反面、著作権侵害の恐れもある。昔話や引用でも問題になる場合もあり注意が必要だ。

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読み聞かせ動画には権利侵害の可能性あり

 市販の絵本の絵と文章には当然だが作者が存在する。小説も同様だ。ユーザーが作者の許諾を得ることなく読み聞かせ動画を投稿した場合、作者の著作権を侵害することになる。たとえそれが営利目的でなくとも、著作権侵害の事実は変わらない。

 侵害は著作権だけにとどまるものではない。場合によっては、事業者などが持つ「公衆送信権」や「送信可能化権」を侵害している可能性もある。これらは、インターネットを経由して絵本などの著作物を配信したり、配信できる状態にする権利のことだ。

 例えば、作者が「インターネットで公開してもOK」と出版社などに許諾を出している場合、許諾を受けた事業者が自社サービスで配信したり、配信プラットフォームに配信を委託できる。無許諾の第三者が配信を行った場合は、許諾を受けた事業者側の権利を侵害していることになる。

 つまり、今回のようにYouTubeなどで読み聞かせ動画を無許諾投稿すると、作者と出版社などの両方の権利を侵害している可能性が高い。

 さらに、動画投稿により権利者の財産権(経済的な利益)を侵害していると見なされると、最悪の場合、刑事告訴の対象になることもある。小説の中には、米Amazon.comのオーディオブックサービス「Audible」といったサービスで正規に流通している有償タイトルもある。無許諾の朗読動画は、このようなタイトルの利益を侵害していることになり得る。

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Audible

 絵本や小説のタイトルそのものが、商標権や不正競争防止法で保護されている可能性も指摘しておきたい。著名なタイトルは、それ自体が商品や作者を認知するための文字標識として機能するからだ。

 場合によっては、商標として登録してあるかもしれないし、たとえ登録されていなくても、有名なタイトルなら権利者が無許諾利用案件に関してクレームを付ける可能性もある。

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