Microsoft、量子計算プラットフォーム「Azure Quantum」のプレビュー版を公開 日本ベンチャーの活用例も:Microsoft Build 2020
米Microsoftは、開発者向けのバーチャルイベント「Build 2020」で量子計算プラットフォーム「Azure Quantum」のプレビュー版を公開した。複数の量子ハードウェアやソフトウェアを利用できる。発表では、日本の量子ベンチャーによる活用事例も紹介された。
米Microsoftは5月19日(現地時間)、開発者向けのバーチャルイベント「Build 2020」で量子計算プラットフォーム「Azure Quantum」のプレビュー版を公開した。
Azure Quantumは、Microsoftやそのパートナー企業の量子ハードウェアとソフトウェアを利用できるプラットフォーム。パートナー企業である米IonQや米Honeywellが作る量子コンピュータや、Microsoftのクラウドプラットフォーム「Azure」上のシミュレーターを量子計算に利用できる。将来的にはMicrosoftの量子コンピュータ上でも計算できるようになるとしている。
同プラットフォームを活用した事例として、日本の量子ベンチャーJij(ジェーアイジェー、東京都文京区)とその顧客である豊田通商で交通信号機による車両の流れの最適化事例が紹介された。
2社は量子インスパイアド(量子計算に着想を得た古典アルゴリズム)な最適化手法をAzure Quantumのプレビュー版を活用して計算。従来の手法に比べ、信号機の数を20程度まで増やしたときの車両の待ち時間を約20%削減できたという。
Azure Quantumを利用するには公式サイトからMicrosoftへ問い合わせる必要があるが、量子インスパイアドな最適化アルゴリズムやMicrosoftが開発した量子アプリケーション用プログラミング言語「Q#」の学習コンテンツは無料で公開している。
ライバルに後れを取るMicrosoft 量子コンピュータのハードとソフトを巡る各社の動き
Microsoftは自社でも「トポロジカル量子コンピュータ」と呼ばれる量子コンピュータを開発しているが、ハードウェアで先行する米Googleや米IBMほど大々的な成果はまだ見えていない。19年11月に初めてAzure Quantumを発表した際には、同社の研究所が最大5万量子ビットを制御できる量子技術を実現したというが、GoogleやIBMなどのように誰でもその計算リソースにアクセスできるようにはなってはおらず、量子ビットの誤り訂正などの性能も明らかではない。
一方、複数の量子ハードウェアを試せる量子計算プラットフォームという観点では、英ベンチャーのCambridge Quantum Computing(CQC)や米Amazon.com傘下のAWSなどが先行している。もっとも、CQCはMicrosoftのパートナー企業であり、計算に利用できるハードウェアも一部共通していることから、プラットフォームにおける目下の競合相手はAmazonになりそうだ。
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