「日本はなぜこんなにスマホケースが豊富なのか」を改めて解説する(2/2 ページ)
世界中で使われているスマートフォンだが、日本だけが突出してケースが充実している。だが、その理由は単純なものではない。
AndroidよりもiPhoneのケースが多い理由
多数のケースを用意するとそれだけ在庫リスクが高まる。スマホケースはスマホの種類ごとに違うので、メーカーや端末のバリエーション全てをカバーするのは難しい。
そうすると、たくさん売れる可能性があるスマホのものだけ、バリエーション豊かなケースが作られるのも当然、ということになる。
iPhoneとAndroidをOSシェアで比較すれば、世界的には圧倒的にAndroidの方が多い。だが、iPhoneは「1シーズンに数種類」しかない一方、Androidは多数のメーカーから多数のデバイスが登場する。
日本でのiPhoneのシェアは4割から5割の間。仮に半分として、Androidはその中に10社近くがある。「シェア5割の中でバリエーションは5つほど」のものと、「シェア5割の中に10社あり、各社最低5機種はバリエーションがある」状況とで比較すると、1モデルあたりの販売数は大きく変わってくる。
さらには、日本で多く売れるAndroidスマホと、海外で多く売れるAndroidスマホがイコールではない、という点も面倒な話につながる。
海外ではSamsungのGalaxyが強く、その他はHuaweiやXiaomi、Oppoといった中国系メーカー、さらにはSamsungと同じく韓国のLGというところだろうか。しかし日本では、Galaxyはそれなりのシェアがあるものの、ソニーモバイルのXperiaやシャープのAQUOSが売れている。だが、他国でこれらのメーカーはシェアが低い。シェアが低いということは、それらのスマホ向けのケースは「日本向けだけに作る」ことになる。日本のニーズはそれなりに大きいものだが、世界中でニーズが大きいiPhoneに比べるとかなり小さいものになる。
結果として、iPhone用のケースは「多数のバリエーションが用意されやすい」状況になり、他は難しい、ということになる。
スマホケースのバリエーションは、実際、スマホそのものの販売にも無視できない影響をもたらす。先ほども述べたように、スマホケースは「アイデンティティーを示すもの」だ。だから、自分のアイデンティティーを示せる(要は気に入りそうな)ケースがたくさんあるものを選ぶ、という人も厳然としているのだ。若い女性にiPhone人気が高かったのは、そうした事情もある。
それも分かっているので、メーカーは自分でスマホケースを用意したり、スマホケースメーカーに販促費の形で補助を入れたりして、自社スマホ用のケースを作ってもらっていたりする。現在は数年前に比べると、「スマホケースならiPhone一択」と言えなくなっていると思うが、そこにはそうしたメーカーの努力も影響している。
これは個人的な見方だが、SIMロックフリー系で頑張る中国系スマホメーカーは、まだその辺の「周辺への目配り」が足りない気はする。スマホそのものの商品性は本当にすごいが、「おじさんでなく女子高生に買ってもらう道筋の組み立て」が弱いのではないか、と思うのだ。まあ、まだそこまで攻め込んでいないせいかもしれないが。
最後にまとめよう。
要は、
- 量販店の最適化
- ユーザーのスマホケースへの愛着
- ケースメーカーの販売戦略
が複雑に絡み合って、「iPhoneの方がスマホケースが多い」「日本はスマホケースのビジネスが積極的」という状況が生まれた、ということになる。
この辺は、文化的な側面をもうすこし掘り下げてみたいとは思っているのだが、今回の考察はここまでにしておく。実はスマホケース以外の、スタンド的な製品はアメリカなどの方が先にヒットしており、そこには「ノベルティ文化」との関係もありそうに思っている。
また次の考察ができるレベルの知見がたまったら、その辺の話もしてみよう。
関連記事
- 新型コロナウイルス流行下での映画産業を考える
2月の時点で現在の状況を予見していた新海誠監督。彼の言葉を手がかりに、今、映画産業が置かれている状況について西田宗千佳さんが考察した。 - 次期iPhoneケース、早くも受注開始
Alibabaで、多数の次期iPhoneケースの受注が開始されている。 - ギフト・ショーの「iPhone 8」3モデル対応周辺機器で予想する、発表の中身と出荷時期
間近に迫ったAppleイベント。そこで発表されるiPhone新モデル(iPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone 8 Edition)はどのようなスペックなのか、出荷時期はどうなのか。そのヒントは東京ビッグサイトにあった。 - 愛知県初のApple Premium Resellerは最新型展示
Apple Premium Reseller店舗の「C smart ららぽーと名古屋みなとアクルス店」がオープン。Appleの最新ガイドラインに基づいた店舗の様子をマニアックな視点で探る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.