「接触確認アプリ」を「なんか信用できない」と思う人に「26のイエスとノー」で答える(4/4 ページ)
誤解の多い「接触確認アプリ」について、西田宗千佳さんが分かりやすく解説する。
アプリをどう使ってもらうのか
体調が悪くなってから使えばいいですよね?
- ノー。むしろ「今」使ってください。
自分が感染を伝えるためではなく、「周囲にどのくらい陽性者が増えているのか」「陽性者との濃厚接触が増えた時にどう活動すべきか」という起点になるアプリ。だから、自分が陽性と疑われるときだけでなく、自分の体調が万全な時にも、周囲と協力する形を作るのが望ましい。そうすることで、第2、第3の感染拡大期の混乱を小さくすることができる。
100%確実に陽性疑いの人との濃厚接触を検知できるんですか? 誤検出はありますか?
- 100%の精度で、という意味ならノー。誤検出はありうる。
単に「近づいたこと」を記録するので、感染の可能性がまずあり得ない環境でも「濃厚接触疑い」として記録する。また、Bluetoothの電波が届かない状況も想定されるが、その場合、近くに長時間いても記録されない。
何より、陽性が疑われる人がスマホを持っておらず、アプリも使っていない時の濃厚接触は検知できない。
通知が来ていないということは、「自分は感染していない証明」と考えていいですよね?
- ノー。
あくまで「このアプリを使っている陽性疑いの人との接触がなかったと思われる」ことが示されるだけで、あなたの感染の有無を判断するものではない。「陰性証明」のような形でアプリを使うことは間違いだ。
全国民の6割がインストールしないと効果が出ないんですよね?
- 正確にはノー。しかし、多くの人々がインストールして使っている状況が生まれる必要があるのは事実で、ハードルは低いものではありません。
多くの報道では、この種のアプリについて「全国民の6割がインストールしないと効果が出ない」とされている。この根拠として使われているのは、オックスフォード大学で病理菌動態学関連の研究を手がける、クリストフ・フレイザー教授の研究グループが米科学雑誌Scienceの2020年3月号に寄稿した論文だ。
とはいえ、現実問題として、人の行動範囲は決まっている。多くの人はそこまで広くない、同じような地域を毎日移動しているものだ。だとするならば、「その地域でどれだけの人が使っているか」という判断によって、アプリの実効性は大きく変わってくる。
日本全体で平均をとって6割を目指すのではなく、感染がまだ落ち着いていない都市部での利用拡大を先に推進する、という考え方もあるだろう。スマホの利用率も地域によってばらつきがあるのが実情で、「日本のスマホ普及率は6割強だから、6割の人が同じアプリを使うのは無理がある」というのも、利用状況を考えるとズレた論だ。
そもそも、一部の国で導入されたアプリとは異なり、「陽性者の移動制限」や「厳密な位置管理」を行うものではなく、即効性のあるものとはいえない。「アプリを使う」のは同じだが、同列に語るのは難しいのだ。
1割・2割の利用率で厳しいのは間違いなく、アプリ利用を促進する施策は必要になる。そもそも、強制力がない時点で「数週間で国民全員が使うアプリになる」と言うのは、過去の事例から見てもナンセンス。数カ月かけて普及を目指し、あくまで「次の感染拡大期に備える」と考えるのが妥当だ。
即効性がなく、何も確実じゃないのなら、結局効果がなくて、アプリなんて無駄なんじゃないですか?
- それはあなたの行動で決まります。
ここまで述べてきてお分かりのように、非常にリスクが低いアプリにすることを多くの人が検討した上で作られている。
「胡散臭(うさんくさ)い」「即効性がなくて意味が薄い」という意見はよく分かるが、その意識が、作ったアプリを無駄にすることにもつながる。リスクが低いことを勘案し、できるだけ多くの人が利用し、その上で問題を洗い出してより良い状態を目指す必要がある。
助け合い運動が「無駄」だとは、筆者には思えない。
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