Linuxカーネルでの「master/slave」と「blacklist」禁止、トーバルズ氏が承認
#BLMで差別的な用語の置き換えが業界で広まる中、Linuxカーネルでもシンボル名として「master/slave」と「blacklist」を使うことが禁止された。リーナス・トーバルズ氏が禁止を承認した。
Linuxカーネルの生みの親で最終的な調整役を務めるリーナス・トーバルズ氏は7月10日、Linuxカーネルでの包括的用語として「master/slave」(主人/奴隷)と「blacklist」を禁止する提案を承認した。
この提案は4日にメンテナーのダン・ウィリアムズ氏が投稿した。5月25日のジョージ・フロイド氏死亡をきっかけに続いている人種差別反対運動の中で、米Twitterや米GoogleのChromeとAndroidチーム、米Microsoftとその傘下の米LinkedInと米GitHubなど、多数のIT企業が同様の決定を発表している。
Linuxカーネルで禁止されるのは、シンボル名やドキュメンテーションでのこれらの用語の使用。ABIの維持に必要な場合や、既存のハードウェアやプロトコルに関連するコードの更新の場合は対象外だ。
master/slaveの置き換えとしては、以下を推奨している。
- primary/secondary
- main/replicaまたはsubordinate
- initiator/target
- requester/responder
- controller/device
- host/workerまたはproxy
- leader/follower
- director/performer
blacklist/whitelistは以下を推奨。
- denylist/allowlist
- blocklist/passlist
ウィリアムズ氏はmaster/slaveについて、「アフリカの奴隷貿易は地球規模で展開された残忍なシステムだった。(中略)用語の置き換えは過去の過ちを消すためではなく、Linuxカーネル開発プロセスに参加するグローバルな開発者コミュニティの可用性と効率を最大化することだ」と説明した。
blacklistについては、「slaveは人間と直接関連する一方、blacklistの語源は人種的なものではない」が、黒と白を許可されない/されるという意味で使うことは多様性を支援していないとした。
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