宇宙では加齢変化が加速 ISS「きぼう」でのマウス実験から明らかに 加速を食い止める遺伝子も発見
東北大学は9月9日、国際宇宙ステーション(ISS)でマウスの飼育実験を行った結果、宇宙への長期滞在で加齢変化が加速することが分かったとする研究を発表した。
東北大学は9月9日、国際宇宙ステーション(ISS)でマウスの飼育実験を行った結果、宇宙への長期滞在で加齢変化が加速することが分かったとする研究を発表した。
東北大学を中心とする研究チームは、通常のマウス6匹と、生体に有害な活性酸素などに対する防御機構として働く「Nrf2」という遺伝子を欠損させたマウス6匹の計12匹をISSの日本実験棟「きぼう」で飼育。約30日間の滞在を終えて、12匹とも生きて帰還した。
帰還したマウスを詳しく調べたところ、宇宙滞在マウスでは各臓器での遺伝子の発現や血中代謝物の変化などが確認され、その一部がヒトの加齢性変化と同じだったという。宇宙に滞在すると筋肉量の低下など加齢に似た現象が起きることは知られていたが、遺伝子発現や血中代謝物の変化でも加齢が確認されたのはこれが初めてとしている。
さらに、Nrf2欠損マウスではこの変化が加速していることが分かったという。これらのことから、Nrf2には加齢変化を食い止める役割があるとしている。
Nrf2は人間にもあり、中には発現量の低い人もいることが知られている。将来的に月や火星などに長期滞在することを考える際に、個人のNrf2遺伝子について調べることが宇宙での健康リスクの評価につながる他、Nrf2を活性化させる薬が宇宙での健康リスク克服に役立つと研究チームはまとめている。Nrf2活性化剤は糖尿病やアルツハイマー病などの加齢性疾患の予防や治療に有用であることが分かっており、多くの製薬企業により開発が進んでいるという。
研究成果は、英Nature Researchのオープンアクセス学術誌「Communications Biology」のオンライン版に9月8日付で掲載された。
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