「失われた20年」を巻き返す──ドコモ完全子会社化でNTTが目指すもの(3/3 ページ)
日本電信電話(NTT)の澤田純社長は、NTTグループの企業価値がバブル崩壊からの30年間で低迷していると危機感を示す。ドコモの完全子会社化で、国内外に対し再度リーダーシップを発揮したい考えだ。
足元では「低廉で使いやすい通信サービスの提供」
一方のドコモとしての直近の戦略については、「低廉で使いやすいサービスを実現する」と吉澤社長は話す。ただし、その方針は今回の完全子会社化によって定まったものではないとしている。澤田社長は「値下げと完全子会社化は独立した事象だが、完全子会社化により財務基盤が整い、結果として値下げが可能になる部分はある」とする。
吉澤社長は「今回の件を通じてサービスやネットワークを強化する。その結果として低廉で使いやすいサービスを実現していきたいという思いは当然ある。顧客にしっかり還元しつつ、企業価値を継続的に向上していきたい」と話した。
「新しいドコモを創業する」 新体制が掲げる5つの施策
吉澤氏は今回の完全子会社化を機に社長職を退く。後任には20年12月1日付で現副社長の井伊基之氏が就く。
井伊副社長は「新しいドコモを創業するつもりで挑む」として、新体制のドコモで行う施策として以下の5つを挙げる。
- 新技術やアイデアを取り入れて新たな価値を次々と生み出す
- あらゆる年代から支持されるサービスと価格を提供する
- 通信もサービスも期待を上回るスピードと品質を提供する
- 個人や法人の顧客から信頼される企業になる
- 新しいライフスタイルを提案し豊かな未来を開拓する
この中でも優先すべきこととして、井伊副社長は4番の「信頼回復」を挙げる。「今ドコモ口座の件でご迷惑やご心配をおかけしている。信頼の回復や補償をしっかりやり、再発を防止するためにあらゆる手段を講じていきたい」とした。
2番の「あらゆる年代から支持されるサービスと価格」について、記者から「(KDDIにおけるUQ mobileやソフトバンクにおけるワイモバイルといった)サブブランドを作る計画はあるか」という質問が出た。これに対し井伊副社長は「何もまだ検討していないのが正直なところ。どういった戦略が2番の目的を達成できるかは考慮しないといけない」としつつ、「ただ後追いしてもそれが客の望む姿か。重要な戦略なのでしっかり考えたい」として、サブブランドの展開には含みを持たせた。
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