大豆を“肉”にどう変える? 焼肉やステーキはできる? ファミマと不二製油に聞いた:食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界(2/2 ページ)
焼き肉やステーキなど、ごちそうに直結する食材である肉。肉に代わる食材として「大豆ミート」が注目を集め、最近はコンビニでも手に入るようになった。大豆ミートはどのように作られ、なぜ注目されているのか――国内でいち早く開発に取り組んできたファミリーマートと不二製油に聞いた。
コスト、人手不足、環境問題の解消へ
このようにコンビニでも手軽に買えるようになった大豆ミートだが、そもそも日本や海外で注目される理由はなぜだろうか。
牛、豚、鶏などの家畜は育てるのに大きなコストがかかる。広い農場・飼育場で、多くの飼料を用いて、食肉としての商品価値が高まるまで飼育を続けなくてはならない。畜産の現場だけではなく、加工現場、貯蔵現場、物流現場など多くの人の手を介して販売される。
この一連の流れには、多くの問題が含まれる。家畜のげっぷやおならからくるメタンガスが地球温暖化を加速させているという問題もあるし、農場整備により森林減少が進むという指摘もある。家畜は水の消費量が多く、何よりも労働力不足の問題が大きくのしかかっている。
そこで、大豆ミートなどの「フェイクミート」が注目を集めている。ヴィーガン、ベジタリアンも食べられるよう穀物など植物性の材料から作られ、「代替肉」や「疑似肉」とも呼ばれる。
飼料の中心成分ともなる穀物を使って肉の代替え品を作る。ということは、家畜の飼育以降のプロセスを大幅に省ける。現時点ではリアルミートより高価だが、今後生産量が増えていくにつれ、コストダウンが進むことも考えられる。
使われている素材はエンドウ豆や小麦、じゃがいも、とうもろこしなどがあるが、中でも高タンパクで低脂質な素材として大豆が注目されているというワケだ。
不二製油が開発を始めたのは50〜60年代
しかし、不二製油は昨今のブームに乗って大豆ミートの開発を始めたわけではない。50年の創業以来、パーム核油や菜種油、ハードバター、チョコレートなどを製造してきたが、61年に豆腐や油揚げなどの原料になる脱脂大豆、67年に畜肉加工品や水産加工品に使われる分離大豆タンパク、69年に肉に近い食感に仕上げた大豆タンパクの製品を販売。74年には大豆タンパクを使ったがんもどきを販売し、精進料理の世界で肉の代用品として使われてきた。
「日本は豆腐にしたりみそにしたりと大豆を活用している国ですが、海外で大豆は油を絞るための作物で、搾りかすは基本的に飼料や肥料として使うしかありませんでした。そこで大豆は植物性タンパクであることに眼をつけ、国内でいち早く搾りかすを活用する脱脂大豆製品の生産をスタートしました」(由良さん)
不二製油からの提案によって、ファミリーマートが大豆ミートを使った弁当、惣菜(そうざい)、調理パン、ソイラテなどの開発、販売を始めたのが2017年。当時は完全に植物性を追求した商品ではなく、動物性由来の原料も入っていたという。
「当初は世の中の健康意識の高まりから始まったのですが、19年12月ごろからオリンピック需要やインバウンド需要で動物性の食品が取れない方が増えてくるのではと考え、肉を完全に大豆ミートへ置き換えて本格的にやっていこうということになりました」(菊永さん)
反響に喜ぶ反面、注目度の高さに驚きも
日本で広がりつつあるとはいっても、まだまだ少ないベジタリアンやヴィーガン対応の飲食店。そこに、全国に1万6000店舗以上を持つファミリーマートでヴィーガン認証シールが貼られた弁当や惣菜(そうざい)があるのだから、インパクトは絶大だ。しかも筆者のように肉が大好きな人が食べてもおいしいと感じる。
「お客さまからもおいしいというポジティブな意見を多くいただいています。大豆ミートは味の入れ方によってリアルさを追求できるからか、本当の肉みたいだという声もいただいています」(菊永さん)
好意的な反響に喜ぶ一方、最近の大豆ミートに対する注目度の高さには驚きもあるという。
「人口増加とともにタンパク源が足りなくなり、代わりは植物性の肉か培養肉か昆虫食かという話はずっといわれてきました。今の消費者心理的には植物性肉を求める声が多いと思うので大豆ミートが注目されるだろうと予想はしてましたが、ここ数年の大豆ミートの伸びは想定していませんでした。大豆ミートが主役になる時代がこんなに急にくるとは思っていなかったですね」(由良さん)
不二製油の大豆ミートもファミリーマートの大豆ミート弁当も、近年のフードテックブームからきたものではなかった、というのが衝撃と面白さがある。戦後の栄養環境の改善を目指してきた不二製油が土台となり、健康状態を意識する消費者に向けていち早く動いたファミリーマート。「想像はしていなかった」とはいうが、これは先見の明がありすぎなのでは、と感じざるを得ない。
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