電話システムをクラウド化、80人が働くコンタクトセンターを完全在宅に “転ばぬ先のつえ”が生きたプラスのコロナ対策(1/2 ページ)
プラス ジョインテックスカンパニーは4〜5月に、約80人が所属するコンタクトセンターでフルリモート勤務を行った。電話対応を自宅で行う上で、どんな取り組みを行ったのか。その背景には、数年前から準備を進めてきた“転ばぬ先のつえ”があった。
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、テレワークをスムーズに導入できた企業は、その裏側でどんな取り組みを行っていたのか。文具大手プラスの社内カンパニーであるジョインテックスカンパニーは、4月7日に7都府県で緊急事態宣言が発令された直後に全社でテレワークを開始。約80人が所属するコンタクトセンターもフルリモート勤務に移行した。背景には、数年前から準備を進めてきた“転ばぬ先のつえ”があった。
“転ばぬ先のつえ”が奏功
プラス ジョインテックスカンパニーが手掛ける事業は、オフィス用品を取り扱うECサイトの運営や、事務機器店やオフィス家具店への商品の納入など。コンタクトセンターでは顧客からの問い合わせに応じて、商品の見積もり額や在庫状況を伝えたり、仕入れの納期を調整したりしている。紙のカタログを参照しながら、商品に関する質問やクレームに対応することもある。1日にかかってくる電話は50〜100本程度だという。
クラウドを活用したBCP(事業継続計画)対策にも早くから注力。リモートデスクトップの「Amazon WorkSpaces」を2016年に導入し、社員が自宅から営業や事務作業ができるようにしている。
「以前からテレワーク環境の整備と訓練を進めていたので、コロナ禍の影響で全社的にテレワークを始めても、困ることはあまりありませんでした」と、同社の山口善生(よしき)氏(デジタルイノベーション推進部副部長)は振り返る。
だがコンタクトセンターでは、働き方の変更に伴う負担が少しあったという。「テレワーク中に子供が泣く声を顧客に聞かれないよう、家の中に防音ブースを設置した社員がいたようです。当社が取り扱う商品は30万点ほどあるので、分厚いカタログを7冊ほど持ち帰って顧客対応に臨む人もいました」(山口氏、以下同)
また、コンタクトセンターは他の部門とは異なり、テレワークに対応できる体制が完全に整ったのは20年に入ってから。16年以降もしばらくは、オペレーターはオフィスでの業務を続けていた。19年の秋から、BCPの一環でコンタクトセンターでもテレワーク環境を整備したところ、くしくも完了と同じタイミングでコロナ禍がやってきたという。
19年の大型台風を機に危機感
山口氏によると、以前のコンタクトセンターでは、業務システムと電話を連携するシステム「CTI」(Computer Telephony Integration)にオンプレミス型を使用。電話を受けた際にPCの画面に通知を表示したり、着信履歴をPC上で管理したりする機能などは社内でしか利用できなかった。
「このままではBCP対策が不十分で、地震や悪天候などでオペレーターが出勤できなくなれば、顧客からの電話に出られなくなる」。そう考えた山口氏らは、19年6月にクラウド型のコンタクトセンターシステム「Amazon Connect」を導入。会社の外線電話にかかってきた問い合わせに、社外のオペレーターがスマートフォンなどで対応できる仕組みを作り始めた。
19年の秋に大型の台風19号が猛威を振るったこともあり、ジョインテックスカンパニーでは同年10月からAmazon Connectのテスト運用を開始。20年1月には、オペレーターに同サービスの運用に慣れてもらうための訓練も始めた。「執務室ではなく会議室に出勤し、家にいるつもりで電話を取ってもらっていました」と山口氏は明かす。
この訓練を始めて1カ月がたったころ、日本でも突如として新型コロナウイルスの感染拡大が問題視されるように。社員の感染を防ぐため、ジョインテックスカンパニーは部門を問わず、緊急事態宣言前の2月下旬からテレワークをスタート。オペレーターも早速、在宅率を40%程度まで引き上げて訓練の成果を試した。山口氏は「出勤したらコンタクトセンターに人が少なく、びっくりして写真を撮ったこともありました」と振り返る。
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