社内システム使えず「テレワークできない」→4000人がVPN同時接続 シオノギ製薬グループの“激動の5日間”(1/3 ページ)
コロナ禍の前までは、テレワークを限られた部署で実施していたシオノギ製薬グループ。4月から急きょテレワークを始め、約4000人の社員がVPNに同時接続できるようにした。その裏側で何があったのか。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業がテレワークに移行し始めてから半年超がたった。だがITインフラの整備が追い付かず、社員が出社している企業もある。一方で、変化にいち早く対応し、テレワークを円滑に行っている企業もある。素早い移行に成功した企業は、その背景でどんな取り組みを行ったのか。4月〜5月に約4000人体制で在宅勤務を行った、製薬大手のシオノギ製薬グループに聞いた。
「コロナ禍の前までは、テレワークは一部の部門で試験導入している程度。グループ全社への展開は決まっていませんでした。緊急事態宣言を受け、発令翌日の4月8日から、テレワークを急きょ正式に始めることになりました」
こう話すのは、シオノギデジタルサイエンスの那須真良樹さん(IT推進第一部 IT戦略グループ)だ。同社は、塩野義製薬がIT部門を会社分割によって切り離し、2017年に創業。シオノギ製薬グループ全体の社内システムの開発、保守、運用管理などを担っている。急な導入に伴って、各社のテレワーク環境を整備したのも同社だった。
「4月13日からは『AWS Client VPN』をグループ社員に提供し、製薬工場勤務を除く約4000人が、自宅から社内システムに同時にアクセスできるようにしました。ですが、テレワークを導入してからの数日間は、うまくいかないこともありました」(那須さん、以下同)
テレワーク当日は「仕事にならない」
シオノギ製薬グループには、全体で約5000人の社員が所属する。社員数が多いことから、テレワークを始めた当日はVPNの同時接続数が不足し、社内システムにアクセスできない社員が続出するトラブルが発生した。これが導入時の“つまづき”だという。
「シオノギ製薬グループは薬品などに関する機密情報を扱うので、社内システムの多くは社内ネットワーク経由でしか使えません。ですが、もともとテレワークを全社的に行っていなかったことから、VPNの同時接続数が足らず、初日に家から社内システムを使えるのは1000人程度の見込みでした」
那須さんらは苦肉の策として、グループ企業の部門ごとにVPNを使える時間帯を細かく設定。順番にVPNにつないでもらう運用にした。
だが、交代制を採用したことによって、VPNにつなげない部門からは「順番が回ってこないと仕事にならない」との声が出た。それに加えて“VPN当番”の部門からも、VPNに接続できるはずの時間帯に「社内システムが使えない」との相談が相次ぐなど、意外な不具合も起きた。
「相談を受けてVPNの仕様を調べ直したところ、誤解があったことが判明しました。1000という数字は、同時接続数ではなく、同時セッション数の上限だったのです。同じ人がVPN経由で複数のアプリを立ち上げると、リソースがあっという間に枯渇していました。実際は、同時にVPNにつなげるのは1000人ではなく数百人だったのです」
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