検索
ニュース

“宇宙エンタメ衛星”でどんな映像や写真が撮れるのか――ソニー、JAXA、東大のキーパーソンが語る(1/2 ページ)

一般ユーザーが人工衛星のカメラを自由に操作し、宇宙から見た地球や遠い宇宙の画像、映像を撮影できるようになる——こんなプロジェクトをソニー、JAXA、東大が進めている。2022年に超小型の衛星を打ち上げる予定。3者のキーパーソンがCEATEC 2020で現状や展望を語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 クリエイターや一般のユーザーが人工衛星のカメラを自由に操作して、宇宙から見た地球や遠い宇宙の画像、映像を撮影できるようになる——ソニー、JAXA、東京大学が目指す衛星プロジェクトの将来像だ。2022年に100kg程度までの超小型の衛星を打ち上げる計画の展望について、「CEATEC 2020」で行われた10月20日のセッションで現状や展望が明らかになった。

photo
一般ユーザーが人工衛星のカメラを操作し、こんな映像や写真を撮れるようになるのだろうか

高感度カメラで宇宙を撮影

photo
東京大学の小泉宏之准教授(大学院新領域創成科学研究科 基盤科学研究系 先端エネルギー工学専攻)

 ソニー、JAXA、東大によるプロジェクトの構想は、JAXAの共創プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の一環として行われるものだ。ソニーが衛星搭載カメラの開発、JAXAが人工衛星の運用などで技術支援、東大が超小型の人工衛星を開発する。

 講演者の一人で東大の小泉宏之准教授は、これまで多数の超小型衛星を開発してきた東大チームの代表。今回のプロジェクトでは衛星開発を担当する。JAXAの藤平耕一さん(新事業促進部事業開発グループ)は、J-SPARCプロデューサーとしてシステムエンジニアリングなどプロジェクト推進に必要な知見を提供する。

photo
JAXAの藤平耕一さん(新事業促進部事業開発グループ)

 プロジェクトを主導するソニーの中西吉洋さん(事業開発プラットフォーム新規事業化推進部門宇宙エンタテインメント準備室)によれば「宇宙から地球や無数の星を眺めるという、これまで宇宙飛行士にしかできなかった特別な『宇宙感動体験』」を提供し、通信・気象・測位衛星といったいわゆる「実用衛星」が中心だった宇宙利用を「楽しみという精神的な価値」に広げることが目標だという。

 衛星に搭載するソニー製カメラは、地球または宇宙に向けて4K動画の撮影が可能で、パン、チルト、ロール、ズームといったカメラの操作を地上から行える。もちろん静止画の撮影もでき、地球の夜の側や宇宙(星)を撮影する際に力を発揮する高感度撮影に対応するという。

photo
高感度撮影に対応するカメラを開発するという
photo
ソニーの中西吉洋さん(事業開発プラットフォーム新規事業化推進部門宇宙エンタテインメント準備室)

 人工衛星にとって、地上の夜景撮影は未知に近い領域だ。一般的に地球を撮影する地球観測衛星は太陽光の反射によって地表の様子を捉えるため、「夜間光」と呼ばれる地表の人為的活動の光源を観測するといった場合を除き、衛星が地球の夜の側に入ると撮影はできない。また、国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙飛行士がカメラで撮影する際にも夜景はかなりの難関だ。2015年に約5カ月間、ISSに滞在したJAXAの油井亀美也宇宙飛行士によれば、秒速8kmで移動しているISSでは、流れる地上の風景を撮影するために宇宙飛行士が高感度カメラを振って「流し撮り」するのだという。

 プロジェクトの衛星で難しい夜景撮影を可能にするのなら、ソニー製カメラの高感度対応に加え、東大が開発する衛星側も高速で姿勢を制御するといった機能を備えて「宇宙から見た夜の地球」撮影をサポートすることも考えられる。

 CEATEC 2020の開催と同じタイミングで10月22日に打ち上げが予定されている、キヤノン電子の超小型衛星「CE-SAT-IIB」も超高感度カメラを搭載し、深夜の地上撮影を目指している。光学機器メーカーにとって、衛星による夜間の地球撮影が挑戦するフィールドとなっているのかもしれない。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る