“宇宙エンタメ衛星”でどんな映像や写真が撮れるのか――ソニー、JAXA、東大のキーパーソンが語る(2/2 ページ)
一般ユーザーが人工衛星のカメラを自由に操作し、宇宙から見た地球や遠い宇宙の画像、映像を撮影できるようになる——こんなプロジェクトをソニー、JAXA、東大が進めている。2022年に超小型の衛星を打ち上げる予定。3者のキーパーソンがCEATEC 2020で現状や展望を語った。
宇宙の映像を楽しむ“宇宙フェス”の開催も?
意欲的な衛星となりそうな3者の人工衛星だが、クリエイターや一般のユーザーはどのように衛星を利用するシーンを考えているのだろうか。中西さんによれば「衛星を自由に操作できる地上システムによって、ユーザーが予約やリアルタイム撮影ができる仕組み」を目指しているという。操作や表示方法は検討中で、スマートフォンやPCからの操作を想定している。より大型のモニターやヘッドマウントディスプレイ、大きな空間に投影するといったことも考えられるという。
例えば個人ユーザーが「結婚記念日に結婚した場所を撮影する」といったことから、ドキュメンタリーやプロモーション映像の撮影、科学館などにむけた教育コンテンツの撮影などまで考えられる。
また、中西さんによると「通信が確保できればリアルタイム、生放送もできる」という。ソニーのグループ内からも“宇宙フェス”のように「宇宙の映像を受け取りながら行うライブエンタテインメント」のアイデアが上がっている。
通信の確保は課題
ただし、衛星と地上の通信の確保は悩ましい問題だ。秒速8km、およそ90分で地球を一周する地球観測衛星の場合、地上の一点から衛星が見えている(通信可能な)時間は10分前後しかない。衛星はあっという間に頭上を飛び去ってしまい、限られた時間で受信できるデータ量はかなり制限されてしまう。超小型衛星の場合、大型のアンテナを搭載して通信を大容量化することも難しく、映像など大容量データのリアルタイム受信にはハードルがある。
この問題について、セッションでは一つのヒントが提示された。セッションにコメントを寄せたスカパーJSATは、同社の持つ静止通信放送衛星などの衛星網を使い、22年以降に超高画質ライブ放送・配信を目指す計画を紹介。3者の人工衛星とスカパーJSATの事業との提携が実現するならば、人工衛星からの映像をいったんスカパーJSATの衛星に送り、静止衛星から映像データを地球に安定して送信するといったことを目指しているとも考えられる。
「地球は美しすぎて言葉にならない」
セッションには、実際に宇宙から写真を撮影した経験を持つ油井宇宙飛行士もメッセージを寄せた。「地球は美しすぎて言葉にならない」といい、日本列島を撮影すると自分たちが住んでいるところが宇宙から見えるという感慨があるという。
こうした宇宙視点から地球を眺める経験は、現在は宇宙飛行士や大型の地球観測衛星を運用する事業者など、ごく一部の人にしか許されていない。今はまだ想像するしかない光景だが、誰でもスマートフォンなど身近な機器から衛星を操作することが可能になれば、新たな表現や作品を生み出すことができるかもしれない。あらためて、事業の可能性を感じさせるセッションだった。
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