テイクアウト特化で原価率68%のハンバーガーを提供 “1人焼肉”運営元がDXに見いだす活路:食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界(1/2 ページ)
入店から商品受け取りまで完全非接触でテイクアウト専門のハンバーガーショップが東京・中目黒に誕生した。DXの推進によってハンバーガーの原価率はなんと68%。店舗開発の背景や取り組みについて代表取締役に話を聞いた。
入店から商品受け取りまで非接触でテイクアウト専門のハンバーガーショップが東京・中目黒に誕生した。店名は「Blue Star Burger」(ブルースターバーガー)。1人焼き肉専門店の「焼肉ライク」を始め、「しゃぶしゃぶれたす」、「やきとり家すみれ」、アメリカの「つるとんたん」などを運営するダイニングイノベーショングループの新業態だ。
ブルースターバーガーの強みは、低価格かつ高品質であること。「ハンバーガー」の価格は1つ170円(税別)。バンズ、ミートパティ、ピクルス、ケチャップというシンプルな構成ながら、低温熟成させたフレッシュなビーフ100%のミートパディを焼き上げ、低価格なハンバーガーとは思えないほどジューシーな1品となっている。
原価率も高さにも注目だ。一般的な飲食店では、商品の原価率が30%以下になることが多く、味にこだわりを持つ店であっても40%以下であることが多い。しかしこのハンバーガーの原価率は68%だという。
従来の外食産業の方程式を無視したブルースターバーガー。低価格かつ高品質な商品を提供する裏側には、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進があるようだ。新業態を開発した背景や取り組みについて、ブルースターバーガージャパンの西山泰生代表取締役に伺った。
連載:食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界
ニューノーマル時代を迎え社会にますますテクノロジーが浸透する今、人の根本を支える“食”はどうなっていくのか――“食いしん坊”を自称するライターの武者良太さんと編集の安田が、テクノロジーと食が融合したフードテックの世界に迫ります。
コロナ禍前から考えていた構想
東急電鉄と東京メトロの中目黒駅より徒歩3分、山の手通り沿いでいわゆる目抜き通りにブルースターバーガーはある。路上からミートパティを焼き上げる様子を見ることができ、まるでライブクッキングのようである。
これは食欲を誘うだろう。小腹もすいたし、ポケットに小銭があるし、1つ食べてみるか……と店内にはいると驚くはず。店内はレジカウンターがなく、スタッフに口頭で注文できず、現金購入もできないのだ。
商品の購入方法は2つ。セルフレジで商品を選び、電子マネーやクレジットカードによるキャッシュレス決済か、専用スマートフォンアプリ(iOS/Android)で事前に注文し支払う方法だ。
また店舗内にはイートインスペースがない。ドリンクを注文した場合は提供されたカップに自分でドリンクを注いで持ち帰る。
まるで「Afterコロナ」を意識した非接触型の店舗のように思えるが、西山さんによるとコロナ禍を意識したわけではなく、その前から企画開発を進めていたという。
「飲食店の業務は大変でスタッフを集めるのも一苦労です。そのため、レジの会計やドリンクの用意、イートインスペースの対応、デリバリーや接客を担当する業務をなくし、テイクアウトの店なら効率的に運営できるのではと考えました。雇うスタッフ数を抑え人件費のカットにもつながます。その結果、食材に多くのコストをかけられるだろうという仮説の下に店舗を作りました」(西山さん)
ハンバーガーに目を付けた理由は「一般的なハンバーガーのテイクアウトは、味やコスト面からまだまだ開発の余地があると考えていました」と西山さん。某ハンバーガーチェーンの売り上げの6割はテイクアウトといわれ、需要は大きいと予測した。しかも商品の性質上、作り置きではおいしいものを提供するのは難しい。テイクアウトの専門店であれば、味やコストを極めたハンバーガーができるのではと思ったという。
省人化した店舗でありながら高品質かつ価格も手頃な商品を提供するため、西山さんが目をつけたのがDX。アプリやキッチンディスプレイなどの活用で省いたコストを、商品に還元する新業態を目指した。
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