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ロボット配膳「焼肉の和民」、“非接触”セルフレジのくら寿司 コロナ禍の飲食店、勝機はIT&ロボット活用にあり(3/4 ページ)

「和民」ブランドから「焼肉の和民」へ全面転換したワタミ。配膳ロボットなどを活用してコロナ禍の難局を乗り越えようとしている。今回はワタミを始めとする各社への取材を通じ、テクノロジーとビジネスアイデアで飲食業がどう時代を生き抜いていこうとしているのかを紹介したい。

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転換先に焼肉を選んだワケ

 しかし、なぜ業態の転換先として数ある飲食の種類の中でも「焼き肉」を選んだのか。新町執行役員によれば、渡邉美樹会長(兼グループCEO)の「海外進出を進めたい。日本の特徴を出すならやはり『和牛だろう』」という考えが発端だったという。

 コロナ禍やさまざまな事情で海外展開の計画は当初から狂ってしまってはいるものの、「飲食で世界を目指す」という計画は現在も進行中という。その前に「まずは日本で地固め」というのも、焼肉業態を全面的に取り入れたきっかけといえる。

 ワタミグループの店舗数は現在424店(10月13日時点)で、そのうち専門業態としてミライザカが143店、鳥メロが130店となっている。残りの多くが今後焼肉屋へと転換される「和民」ということになるが、新町執行役員は「居酒屋マーケットは形は変わってもなくなることはないし、ワタミ自身が創業形態である居酒屋をなくすこともない」としている。

 牛肉を前面に押し出す過程で、既存業態への展開の第一歩としてミライザカと鳥メロの新メニューが発表されたが、その会見の場でワタミの清水邦晃社長(兼COO)は「居酒屋業界はコロナ前の70%水準程度まで縮小することになる。それでもいろいろ工夫をしてようやく70%という状態で、60店舗の撤退を経て、現在は家賃交渉や生産性向上で黒字になる店舗を残すことにした」と、コロナ禍の店舗整理の方針を説明。

 その上で「コロナ禍でも好調な業態があり、それが『かみむら牧場』『焼肉の和民』『から揚げの天才』の3業態。これからは専門業態の仕入れ力と開発力を生かして居酒屋メニューに展開していく」(同)とした。

 なお、以前のような大規模な宴会は厳しいものの、年末に向けて3〜4人程度の比較的小規模な忘年会需要はあると考えており、こうした利用者をターゲットにした商品開発やキャンペーン展開を進めていくという。


新メニュー発表会で事業方針を説明するワタミの清水邦晃社長(兼COO)

くら寿司にみる「非接触」 セルフレジは指も“タッチレス”

 「接触機会を減らす」という観点から工夫を行い、その点をアピールする飲食店はワタミだけではない。例えばすしチェーンを展開する「くら寿司」では、10月13日に池袋サンシャイン60通り店で、16日にはなんば日本橋店で「“タッチレス”なセルフレジ」導入を発表した。

 くら寿司はセルフキオスクでの座席案内が行われるサービス機の導入を進めている。テーブル席で利用できるスマートフォンからのテーブルオーダー機能と組み合わせ、入店から退店までほぼ店員との接触がなく、さらに「タッチレス」でのオーダーや決済が可能だ。


くら寿司の池袋サンシャイン60通り店では「非接触型サービス」を導入

 くら寿司では、焼肉の和民も今後導入するとしているスマートフォンからのオーダー機能が利用できるようになっている。回転ずしでおなじみの流れるレーンから商品を取り出すスタイルも継続しているが、これとは別に流れてこない商品を個別注文できる他、オーダーのカスタマイズも据え付けのタブレットやスマートフォン上から可能だ。

 スマートフォンをオーダーに使う場合、タブレット端末に表示されているQRコードを読み込むことでWebブラウザ上でメニューが開き、ここから注文やカスタマイズが行える。注文した商品は専用の特急レーンで配達されてくるため、回転ずしで気になるポイントである「流れてくる商品は時間が経過してないか?」「衛生的に大丈夫か?」といった点で安心だ。

 一方の流れるレーンについても、プラスチック製のケースに収まった状態で席の間を回っているため、衛生面の心配も少ないといえる。


流れるレーン以外に、スマートフォンから直接注文が可能な仕組み。QRコードをスマートフォンで読み込む

表示されたメニューからカスタマイズして注文が可能。注文した商品は特急レーンで届く
スマートフォンで注文した皿が届く様子

 問題はチェックアウトで、スマートフォンやタブレットを使って注文した特急レーン経由で配達される皿については正確にその内容を把握できるものの、通常の流れるレーンの方では皿を自由に取れるため商品内容の把握が難しい。

 流れるレーンについてはセンサーで商品をいくつ取ったかをカウントしている他、チェックアウト時にテーブル横にある返却口に皿を投入してもらうことで、枚数を比較して“ごまかし”がないかをチェックし、問題なければチェックアウトが可能になっている。チェックアウト時にバーコードが発券されるので、これをレジへと持っていけば会計が行える。

 皿の投入システムや特急レーンは以前からある仕組みだが、会計時のセルフレジは初めて導入されたもので、サービスイン初日は戸惑いながらも多くの客が精算を済ませていった。

 セルフレジの最大の特徴は「タッチレス」であること。タッチパネル下側に指の動きを計測できるセンサーが搭載されており、指で画面に直接触れることなく、ある程度近づけただけで項目が選択できるようになっている。


取材時点で池袋サンシャイン60通り店に初めて導入されたセルフレジ。各種非接触決済に対応

タッチスクリーンの下には指の動きを検出するセンサーがあり、画面に触れずに項目選択が可能

 この仕組みは、すでに他店舗へも展開が進んでいるセルフ案内サービス機にも導入されており、ともに「他人が触る可能性のある箇所を“タッチレス”で通過できる」というメリットがある。

 ただし、スマートフォンを使ってテーブルオーダーを行った場合でも、チェックアウトのときのバーコード発行処理はタブレットの操作が必要なため、ここだけ「タッチレス」ではない点が玉にきずだ。テーブル案内前に清掃が入るため接触機会の面での安全性は問題ないと思うが、このあたりは今後のオペレーション改善で対応してほしいところだ。


チェックアウトはタブレット経由で行う。ここが現在唯一「タッチレス」を実現できていないポイントだという

すでに9月末時点で322店舗へ導入済みの入り口にあるセルフ案内サービス機

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