人型ロボットがピペット操作、AIで自律的に細胞培養 理研とJSTが開発
人型ロボットとAIを使って細胞の培養を自動化するシステムを、理研とJSTが開発。ロボットは2本の腕でピペットや培養プレートを操作。AIは増殖ペースの予測や進捗(しんちょく)管理などを行う。
理化学研究所と科学技術振興機構(JST)は12月4日、人型ロボットとAIを使って細胞の培養を自動化するシステムを開発したと発表した。ロボットは2本の腕でピペットや培養プレートを操作し、人間が決めた目標値まで細胞を増やす。AIは増殖ペースの予測や進捗(しんちょく)管理、ロボットへの指令を行う。一部の実験現場に試験導入し、成果が得られたという。
使用するロボットは、ベンチャー企業のロボティック・バイオロジー・インスティテュート(東京都江東区)が開発した「まほろ」。腕を動かしてピペットに試薬を投入したり、ビーカーを振ったりといった操作に対応する。今回のシステムでは人間が定めた手順に従って、自律的に培養プレートを操作し、細胞を新しい培地に移す作業「継代」も行う。
使用するAIは、顕微鏡が取得した画像を認識し、細胞の密度や増殖のペースを推定する機能を持つ。細胞の量が目標値に達するまでの時間を予測することや、試薬や消耗品の残量を認識しながら、適切なタイミングでロボットに継代を指示することも可能。
作業を行う中で、システムの状態や細胞の増え具合を示すグラフなどを作成し、実験の管理者にリアルタイムで伝える機能も持つ。これにより、研究者同士の接触を減らして新型コロナウイルスの感染予防に配慮しながら、研究の効率を高められるとしている。
このシステムで細胞を培養する際は、顕微鏡、インキュベーター(恒温器)、器具の操作スペースを備えた無人の実験室にロボットを配置し、作業を任せる。
理研とJSTはすでに、同システムを使ってヒト胎児腎細胞を培養する実証実験を実施。その結果、試料の汚染やシステムエラーを防ぎながら、9日間にわたって細胞を自動で培養することに成功したという。
両機関はこの成果を論文にまとめ、国際的な科学雑誌「SLAS Technology」のオンライン版に12月4日付(日本時間)で掲載した。
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