M1搭載MacBook AirとDaVinci Resolve 17βでスピード編集してみた:動画編集実務で計るM1 Macの実力(4/4 ページ)
小寺信良さんのM1 Mac連載第2回は、サードパーティーでありながらいち早くM1ネイティブ対応を果たしたビデオ編集ソフトを試す。
リアルタイムを遙かに超えるレンダリングスピード
今回のテストでは、素材を全て内蔵SSDにコピーしている。MacBook AirでGPU 8コアを選択すると、内蔵SSDは自動的に512GBがミニマムとなるので、ストレージには余裕がある。しかしこれまで、H.265素材では、編集しやすいProRes422などの低圧縮コーデックに変換する必要があったため、素材容量が10倍以上に膨れ上がるのが常であった。512GBあったとしても、油断できないわけである。
だがM1ではH.265をそのまま編集できてしまうので、中間素材でストレージが圧迫されるようなこともない。短いニュースであれば、数本は内蔵SSDで編集可能だろう。
今回編集したものは、途中テロップや音楽などを加えた約6分のコンテンツとなった。これをYouTubeアップロード向けに、フルHD解像度でレンダリングしてみたところ、レンダリング時間は2分20秒であった。シンプルなカット編集ではあるが、H.265からH.264へ変換、さらに4KからHDへリサイズを行いながらのレンダリングで、実時間の半分で終了するというのは、相当速い。しかもMacBook Airなので、ファン音はゼロである。
レンダリング中の様子もアクティビティモニタで観察してみた。CPUの利用率は約115%となり、GPUもほぼ100%に近い。
Intel版でも同じデータをレンダリングしたみたところ、レンダリング時間は2分55秒と、25秒の差がついた。CPUの使用率では260%を超えており、GPUの利用率も80%を超えている。かなり全力でCPUをぶん回してもIntelバイナリでは追いつけず、M1バイナリの効率の良さを実感できる結果となった。
これまでH.265は編集負荷が高いため、収録では敬遠されるフォーマットだったが、このスピードなら全然問題なしである。ただし今回はiPhone収録だったので、再生互換が確認できている。H.265にはCodec IDが「hev1」として収録する機器もあり、このファイルはパラメータの格納方法が違うので、macOSでは再生できない。動画解析ソフトがあればすぐ分かるのだが、念のため事前に再生互換性をテストしてから収録に望んでほしい。
最後に消費電力の話をしておきたい。Intel CPUの場合、動画編集となると通常時の4倍ぐらいの電力を消費するので、ACアダプターなしではまともに1本編集できなかったものだが、今回はあえてバッテリー駆動だけで編集してみた。実際の作業時間はレンダリングまで含めて1時間半ぐらいだと思うが、100%のバッテリー残量から作業を始めて、終了時のバッテリー残量は74%であった。通常時よりもかなり電力消費が激しいとはいえるが、最終5分程度の簡単なコンテンツであれば、バッテリーだけで十分作業できることが分かった。
今度こそ、展示会場で取材した素材をプレスルームで編集してサッとアップロードする、ぐらいの作業はできそうだ。CP+もオンライン開催が決定してガッカリしているところだが、早くそういう機会に恵まれるよう、祈らずにはいられない。
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