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AIがクマやイノシシ撃退 野生動物を音と光で追い払うシステム、開発のきっかけは?(2/3 ページ)

会津大学が発表した、AI技術でクマやイノシシを追い払う「野生動物検出システム」。開発に至った経緯や仕組みを聞いた。

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学習済の汎用AIモデルをチューニングなしで利用

 野生動物検出システムがクマやイノシシを検出する仕組みは次の通り。まず装置に備え付けたモーションセンサーが何らかの動く物体を検出すると、連動してカメラが自動的に対象物を撮影する。次に撮影した画像をAIが分析し、クマやイノシシが写っていると判断した場合は装置のライトが作動。スピーカーから音を発して動物を威嚇するとともに、近隣住民に対して警告を発する。

 同時に、クマ・イノシシの出現を検知した旨をデータセンターのサーバに通知。あらかじめ登録してある近隣住民のメールアドレス宛に注意喚起のメールを一斉送信する。

 AIを使った画像認識は、装置内で処理が完結しているという。

 「クラウド上でAI処理を行う方式も検討したが、クマによる人身事故を防ぐには一刻も早く警報を発する必要がある。そのため、画像認識処理にある程度の時間がかかるクラウド方式より、装置内で短時間のうちに処理を終えられるエッジ方式を採用した」

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イノシシを検出した際の画像

 画像認識処理を行うAIモデルには、Googleが開発した「Inception-v3」を採用。このモデルは初期状態で大量の画像データを学習しており、利用者が手を加えなくても画像に何が写っているかを判別できる。今回は「汎用の深層学習モデルでどの程度の精度を出せるか」を評価するために、あえてチューニングを一切行わずに利用している。

 「実際にクマを追い払う画像を初めて見た時は、これまで積み重ねてきた研究の成果がしっかり実を結んだことにほっとした。しかし認識処理の時間や精度については、まだまだ向上の余地がある」

 現状では画像認識処理に2、3秒かかるが、これを短縮すべく、より動作の早いAIモデルの利用や処理アルゴリズムの改良を検討している。改善の成果は、21年春に発表予定の次期バージョンに反映する予定だ。

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