AIがクマやイノシシ撃退 野生動物を音と光で追い払うシステム、開発のきっかけは?(3/3 ページ)
会津大学が発表した、AI技術でクマやイノシシを追い払う「野生動物検出システム」。開発に至った経緯や仕組みを聞いた。
さらなる精度向上やコスト削減に向けて改良を続ける
ハードウェア面においても、さまざまな改善策を検討している。認識精度のさらなる向上のためには、より鮮明な画像を撮影する必要がある。しかし夜間に撮影した画像などはどうしても鮮明さに欠けるため、認識率が低下してしまう。
「夜間の撮影は、装置に取り付けた赤外線投光器とカメラを組み合わせて行う。だが正面に障害物があるとそれに赤外線が反射してしまったり、投光器を保護するために付けているプラスチック板に赤外線が反射してしまったりして、画像が白っぽくなってしまう。その結果、認識率が大幅に低下することもある」
昼間に撮影した画像でも、時間帯などによっては風景の色合いが大きく異なり、認識率にばらつきが出ることもある。こうした課題を解決するためには、より鮮明できれいな画像が撮れるカメラや赤外線投光器を利用するか、AIモデルにチューニングを加える必要があるという。
「現在利用している汎用AIモデルは、鮮明な画像を使って学習させたもので、不鮮明な画像の分類は苦手。従って、私たちの手で独自に不鮮明な画像を学習させることで認識率を上げられるのではないかと期待している。ただその場合も一からモデルを新たに構築するのは非効率なので、既にある程度完成したモデルに手を加える『転移学習』の手法をとる予定」
現時点では装置の正面にいる野生動物しか検知できないが、カメラやモーションセンサーを側面や背面にも取り付けることで、より広範囲に対象を検出できるようにする計画もある。
電力の供給についても改善したい箇所があるという。現在は大型のソーラーパネルと蓄電池を使って稼働に必要な電力を確保しているが、装置の消費電力をさらに減らしてソーラーパネルや蓄電池のサイズやコストを抑えられれば、実用化への弾みがつくとしている。
「光や音を発する仕掛けを省けばさらに小型化・簡素化でき、通信モジュールを現状のLTEからLPWAN(省電力広域通信)のような方式に変えれば、さらなる小型化・低コスト化・省電力化が可能になる。将来的にはこうした部分まで踏み込んでいって、さらに手軽に導入・利用できる製品へと改良を進めていきたい」
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