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ドローンが空中で故障しても墜落を防ぐ技術 ローターの代わりに機体を高速回転Innovative Tech

機体を高速回転させることで安定した飛行を可能にし、指示通りに軌道制御する。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 スイス・チューリッヒ大学とオランダ・デルフト工科大学の研究チームが開発した「Autonomous Quadrotor Flight despite Rotor Failure with Onboard Vision Sensors: Frames vs Events」は、マルチローター型ドローンの飛行中、ローターが1つ故障しても安定した自律飛行を続け、墜落を防ぐシステムだ。機体を高速回転させることで安定した飛行を可能にし、指示通りに軌道制御できるという。

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1つのローターが機能しなくなると、機体を高速回転させることで墜落を防ぐ

 マルチローター型ドローンのローターは通常4〜8つで、各ローターにそれぞれモーターが組み込まれているが、そのうち1つでも故障して回らなくなると機体の姿勢が崩れて墜落してしまう。

 研究チームは、ローターが1つ使えなくなっても、搭載したカメラからの情報を使用し、残ったローターで機体自体を高速回転(20rad/s以上のヨー回転)させることで自律飛行の継続を図った。

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手前のローターが故障した状態のドローン

 このような高速回転を実行すると、通常は自分の位置を特定できなくなり墜落する。GPSや外部センサーからトラッキングしていれば解決するが、物陰に隠れるなど信号が届かない場所では追跡不能となる。

 そこで本手法では、ドローンに2種類のカメラを搭載しトラッキングする。1秒に数回一定の速度で画像を記録する標準カメラと、光の変化を検出した時のみ動作するイベントカメラの2種類のカメラからの情報を組み合わせて、周囲に対する位置を追跡するアルゴリズムを開発。これにより、ドローンが3つのローターだけの高速回転飛行になっても制御可能になる。

 2種類のカメラを搭載しているのは、暗い場所でもうまく機能させるためだ。標準カメラだけでは、照明が低下するとモーションブラーが発生し機能しなくなるが、イベントカメラと組み合わせることで暗い場所でも機能する。

 野外実験では、ローターが1つ停止している状態のドローンが、高速回転しながら指定通りの軌道を飛行できるかをテストした。結果、4mの前方飛行を行い、その後原点に戻る指示に対して、軌道通りの飛行ができたという。

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野外飛行の実験

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