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隣を見て協調動作する魚ロボット群 ハーバード大「Bluebot」開発Innovative Tech

魚群の「暗黙の調整」をロボット群のコントロールに取り入れた。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米ハーバード大学の研究チームが開発した「Implicit coordination for 3D underwater collective behaviors in a fish-inspired robot swarm」は、小型の魚ロボットを同期させて群れで行動させる水中マルチロボットシステムだ。カメラと青色LEDを駆使することで、GPSなどの外部信号を使わずに、近くにいる魚ロボットの情報を位置や方向を3次元で認識する。

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Bluebotと呼ばれる群れ用魚ロボット

 今回のロボットは、長距離移動、捕食者の回避、餌の発見など、複雑で同期した行動を取る魚の群れから着想を得ている。魚の群れは、誰かが指揮したり、次に何をすべきかについて互いにコミュニケーションしたりすることはない。いわゆる暗黙の調整、個々が隣の魚の行動に基づいて決定を下す。ここに着目した。

 このメカニズムに従い、今回のシステムは、GPSやWi-Fiなどの中央集中型制御なしに水中のロボット群を、2次元ではなく、水中という3次元空間で制御する。

 研究チームは、両目に配置する2台のカメラと、背面と前面に配置する青色LEDライト3台に基づく魚ロボット「Bluebot」を開発した。体長は約130mm。4つの独立して動作するフィンを搭載し、80度の方向転換を5秒以内に達成する3次元の動きで、最大速度150mm/sが可能。フィンは、カスタムの電磁アクチュエーターで駆動する。

 Bluebotのカメラは、195度の魚眼レンズでほぼ全方向を捉える。近くのBluebotの青色LEDライトを検出し、サイズや位置から開発したアルゴリズムを使用して相対的な距離と方向を3次元でリアルタイムに決定。近隣に対して3次元運動の応答も行う。最大で5m先のBluebotを検出可能という。

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Bluebotの概要

 群れを制御するプラットフォーム「Blueswarm」を開発し、7台のBluebotで集団行動の実験を巨大水槽で行なった。最初の実験では、ランダムに泳ぐロボットを同期させ、分散と集合の切り替えテストを行なった。次に、円を描くように集団で泳ぐ動作もテストした。どちらの動作も成功した。

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円を描くように集団で動作するBlueswarmの制御実験

 次に、捕食を想定し特定の物体を探索する実験を行なった。捕食対象を赤色LEDに点灯させ、水槽の下隅に配置。このタスクを達成するために、3つの動作(検索、アラート、収集)を組み合わせた。赤色LEDを検出した最初のBluebotは、アラート動作に切り替わり、その位置を保持しつつ他のBluebotを収集するための信号となるLED点滅動作を行う。他のBluebotが点滅する信号を検出すると、信号に向かって移動、赤色LEDに近づくと、同じように点滅し始め、それによって収集レベルを強化する。最終的に、赤色LEDに全Bluebotが集合し、探査実験も成功した。

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下隅の捕食対象(赤色LED)を探査する実験

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