法案の変更点をGitHubのように比較する「LawHub」、Twitterで注目も実は開発停止中
政府CIO補佐官のツイートをきっかけに法案の変更箇所をGitHubの差分形式で可視化するプロジェクトがTwitterで注目を集めている。変更箇所をカラーマーカーで表示する。
国会に提出された議案をGitHubの差分形式で可視化する――こんなプロジェクトがTwitterで注目を集めている。プロジェクトの名前は「LawHub」。国会に提出された改正案と現行法を比較し、変更箇所をテキストエディタに色付きで表示するツールだ。政府CIO補佐官を務める楠正憲さんも自身の公式Twitterアカウントで「オモロい!これ分かりやすいじゃん」と言及していた。
実際にGitHub上にリポジトリ(一連のプロジェクトデータ)があり、総務省の「e-Gov法令検索」から得た現行法でmasterブランチ(本番の履歴)を更新しつつ、ある時点の法律に対する修正案の履歴となるfeatureブランチを衆議院の議案データから作り、具体的な修正案をプルリクエスト(修正を依頼するGitHub上の機能)として作成。これらを機械的に更新しているという。
GitHubの差分可視化機能をそのまま使うため、修正案で削除された文は薄い赤、追加された文は薄い緑で表示。文中で削除された語句は濃い赤マーカー、追加された語句を濃い緑マーカーで表示される。
ここ数日で注目を集めたことから、一見最近リリースされたサービスのように思えるが、そうではない。公式Twitterアカウントの投稿をさかのぼると、LawHubは2019年12月に初投稿していたことを確認。初投稿の内容は日本の調査捕鯨に関する法律の改正案だったが、20年1月の民法改正に関する投稿を最後に更新が止まっていた。
ネットでの注目を受け、LawHubは公式Twitterアカウントを更新。プロジェクトの説明や現在、開発を停止していることを明らかにした。
このプロジェクトは「改め文」という法律の改正案に対し、自然言語処理とGitHubの機能を使うことで修正部分を可視化するプロジェクトだったという。
だが、改め文は独特の表記方法や改正案の附則などがあり、機械的に処理するのが難しかった上、各省庁が「新旧対照表」という形で公開していたことが判明したため開発を停止したという。処理を完全に自動化することは難しく「最終的には、自動で7割ほど処理を行い、残りの3割を手作業で修正する、という流れでサイトを公開した記憶がある」とも投稿した。「改め文を(不正確な)差分形式に戻すというのはあまり価値の無いリバースエンジニアリング」とも指摘している。
開発者は現在、各法案に関するニュースを集約した「PolityLink」という別サイトを運営しているという。開発者は「GitHubのプルリクエストで法律の改正案を管理するのはやはり興味深い試み。法律の編集履歴が自然な形で管理されるのは法改正の流れを把握する上でも利点がある。今後も引き続き考えてみたい」としている。仮にLawHubを再開する場合は「新旧対照表のPDFをGitHubのプルリクエストに変換することになると思う」とも予告している。
なぜ今注目に? きっかけは中央省庁で多発する法案の誤字脱字
そもそもこのツールが注目を集めたのは、中央省庁が書いた法案などの文中で誤字脱字が相次いでいると問題視されたのがきっかけだ。
こうした中、農林水産省が法案の記載ミスを防ぐために、業務でジャストシステム(徳島県徳島市)のワープロソフト「一太郎」の使用を禁止し、米Microsoftの「Word」を原則化したとの一部報道に対し、元経産官僚で制度アナリストの宇佐美典也さんが「何が違うって一太郎は縦書きをベースに、ワードは横書きをベースにレイアウトを考えてるんだよね」とTwitterに投稿。それぞれの優れた点を指摘し、一太郎が批判の矛先になっていることに疑問を呈した。
さらに宇佐美さんは自身の官僚経験などから、法律の新旧を比較する文書をWordで作成することにも「非効率」と指摘した。
これに反応したのが楠さん。自身の公式Twitterアカウントで「新旧も改め文も捨ててWordの見え消しとかGitHubに移行するのがDXじゃないですかね?」と投稿していた。
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