グラフィックスが“初代プレステ”レベルと話題のJTB製バーチャル空間 サービスの意図を聞く(2/2 ページ)
JTBが4月7日に発表したバーチャル空間事業「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」の動画が波紋を呼んでいる。グラフィックスの品質が低いとして、YouTubeのコメント欄やTwitterでは批判が殺到。JTBにサービスの意図を取材した。
FIXERをパートナーにしたのは「実績とビジョンの共有」
同プラットフォームの開発面は、パートナーのFIXER(東京都港区)が担当している。バーチャル空間の活用なら、他にもクラスター(東京都品川区)の「cluster」や、米VRChatの「VRChat」、米Microsoftの「AltspaceVR」など選択肢はあったのではないか。
JTBは「他の事業者ももちろん検討はした」とした上で「実績があり、ビジョンも共有できたことからFIXERを選んだ」と話す。
「同社はクラウドとXR技術に長けており、同社のバーチャルイベントプラットフォームは日本マイクロソフトのデジタルイベント『de:code 2020』で採用されるなど実績がある」
「重要なのは、ビジョンを共有できたこと。JTBの目指すところは、東京など都心のみをバーチャル空間化することではなく、全国各地のバーチャル空間を作り、交流を促進してバーチャルとリアルをつなぐこと。この考えに共鳴いただいた」と協業の経緯を説明した。
まずは外国人ユーザーに限定公開してフィードバックを募集
同プラットフォームは、まずJTBグループのFun Japan Communications(東京都港区)が運営する日本紹介メディア「FUN! JAPAN」の外国人ユーザーの中でも、熱心に活動している「アンバサダー」に限定して4月末から公開し、フィードバックを募るという。
同メディアの会員は主にアジア地域の日本ファンであるため、展開としてはまずはアジア地域の外国人ユーザーを増やし、その後日本を含め世界中のユーザーを獲得していきたい考えだ。
コロナ禍でインバウンドが減少する中、日本の観光産業と国内外の消費者をつなぐのは重要なテーマといえる。とりわけ、日本の旅行代理店最大手であるJTBの取り組みは、FUN! JAPANなどを通じて海外の多くの日本ファンに届くだろう。
バーチャル空間を活用するビジネスは今に始まったわけではなく、2003年に運営が始まった米Linden Labの「Second Life」など、一度はブームを巻き起こしつつも「失敗」と評価される先例もある。
ローンチ前からグラフィックス面での懸念もある中、先例なども踏まえてJTBはいかに魅力的なプラットフォームを構築するのか。今後の動向にも注目が集まりそうだ。
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