19歳の学生社長が音声合成サービス開発、3日でユーザー5万人 AIの勉強はWeb授業とインターンで(2/2 ページ)
19歳の大学生がAIベンチャーを立ち上げ、音声合成サービス開発。ユーザーは3日で5万人以上が集まった。AIの勉強はWeb授業やインターンで学んだというが、どんな背景でサービスの開発に至り、今後どのように展開していくのか。
「無料で使えるフォントのような立ち位置に」 “利用料タダ”の理由
CoeFont Studioの特徴はその仕組みに加え、規約を守れば無料で商用利用できる点にある。AI音声合成サービスはすでにいくつもあるが、商用利用するためには有料のライセンスが必要なものも少なくない。そんな中で、なぜYellstonはCoeFont Studioを無料で提供するのか。早川さんはこう話す。
「既存のサービスのように商用利用を有料にすると、CoeFont Studioを使ったクリエイティブの可能性が縛られ、面白くなくなってしまうと思った。サービス名やアリアル、ミリアルといったキャラクター名から分かる通り、無料フォントのように誰でも気軽に使えるサービスにしたかった」
AIで声を再現する別サービスでマネタイズ
とはいえ、Yellstonも営利を目的とする企業だ。CoeFont Studioを無料で提供するにしても、何らかの方法で収益を上げる必要がある。早川さんは今後の方針についてこう話す。
「すでに提供しているCoeFont Studioの機能は、会社が倒産するまでは無料のままでやっていく。マネタイズの手段としてはまず、6月に『CoeFont CLOUD』という有料の新サービスを提供する」
CoeFont CLOUDは、ユーザーの声をAIを活用して再現し、1回500円程度で提供するサービスだ。まず、ユーザーはYellstonが提供する15分〜1時間分の文章を読み上げて録音する。Yellstonはこのデータを基に声をAIで再現し、CoeFont Studioと同じ感覚で使えるようにする。
ユーザー自身の声だけでなく、アマチュア・プロの声優など、他人の声も許可があれば有料で使えるようにするという。すでにいくつかの声優事務所と提供に向けた協議を進めており、発生した利益の一部を声優や所属事務所に還元できる仕組みを目指す。
基本的にはコンデンサーマイクなどの機材で収録することを想定しているものの、スマートフォンで録音した音声でも再現できるようにする方針という。早川さんは想定する用途についてこう話す。
「声の収録に手間が掛かる割に、収益が見込めない取り組みに使える。例えばオーディオブックは1冊収録するのに200万円掛かるといわれており、回収が見込めなければそもそも制作できない。しかしCoeFont CLOUDなら収録の手間を減らせるため『声優が読み上げるオーディオブック』などをこれまでより手軽に作れる」
病気で声帯を切除せざるを得ない人が自分の声を保存する、CoeFont Studioと同様にゲーム実況やアナウンスなどに使うといった用途も想定しているという。利用の幅を広げるため、サービス開始後には外部のアプリやサービスと連携しやすくするAPIも提供する方針だ。
今後はCoeFont Studioにも有料オプション
早川さんによればCoeFont CLOUDだけでなく、CoeFont Studioでも有料の声やオプションを月額制で提供し、収益化につなげるという。
「『Avenir』というフォントをモチーフにした男性の声『Averuni』(アベルーニ)を月額300〜500円くらいで提供する方針。『マジ切れアベルーニ』や『悲しむアベルーニ』など、さまざまな感情を反映した声質をセットにして販売する。商用利用も認める」(早川さん)
有料オプションについては、サービスに入力したテキストや読み上げ時のアクセントなどの設定を保存できる機能を検討しているという。現在CoeFont Studioでは、一度入力したテキストや設定はWebブラウザやそのタブを消すと削除されてしまう。これを保存可能にすることで、ユーザーがサービスを利用しやすくするとしている。
学業と社長業の両立は? 「授業がリモートなので片手間に……」
CoeFont StudioやCoeFont CLOUDでのマネタイズを着々と進めるYellston。しかし、それを率いる早川さんは大学生。学業との兼ね合いで、業務に支障は出ないのか。
「実はコロナ禍の影響で大学の講義がリモートになっており、今のところ授業には苦戦していないため、片手間に業務などを進められる。ただ、こうやってインタビューに答えていると、教授から課題の提出をせっつかれてびっくりすることがある。今回も気を付けたい」(早川さん)
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