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初音ミク×中村獅童の超歌舞伎「御伽草紙戀姿絵」はどう作ったか 超会議・超歌舞伎総合プロデューサーに聞いた 「江戸時代の歌舞伎はフジロック」(2/7 ページ)

ニコニコ超会議の目玉の一つ、中村獅童と初音ミクによる超歌舞伎を作ったドワンゴの横澤大輔専務に話を聞いてきました。

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第1作から「これを古典にする」と考えていた

−− 今回の超歌舞伎「御伽草紙戀姿絵」を見て、まず感じたのが、いよいよ、名刀「小狐丸」の存在感が増してきたなということでした。超歌舞伎第一作である「今昔饗宴千本桜」で青龍と戦った白狐の魂を宿す剣として、超歌舞伎の演目の重要アイテムになっていますよね。これは当初から予定していたことなのですか?

横澤大輔さん(以下、横澤さん) 具体的にアイテムとして考えていたわけではないのですが、最初に、歌舞伎とデジタルを融合させようとした時に僕が考えた「今昔饗宴千本桜」のキャッチコピー「桜がつなげるキセキ。」というのが、いわゆる「小狐丸サーガ」的なつながりの元になってるんです。

 「千本桜」という楽曲が歌舞伎の「義経千本桜」とつながった時に、超歌舞伎というストーリーが始まったという、そこを大事にしていこうと思ったんです。それと、デジタルと伝統芸能の融合というものを、一時の見世物的なイベントで終わらせたくないと思ったんです。これを古典にしていくということを、1作目から考えていました。

 何度も繰り返し上演することで、演目も演出も練られていくことを想定していたわけです。だから、物語も登場人物も時代も違う演目でも、ストーリー上の横串みたいなものは刺していこうとしたんですね。それが超歌舞伎であり、小狐丸サーガの本質になってるんです。

−− その横串として刀を選んだのには、何か理由があったんですか?

横澤 それは何でも良かったんだと。桜や狐という可能性もあったんですけど、毎回、狐を出すとなるとストーリー上の制約ができてしまうし、桜にすると季節が春に限定されて、今回の紅葉みたいなことができなくなるんです。

 最後に刀での大立ち回りがあって大団円という超歌舞伎の一つの型みたいなものもあるし、元素としても一番小さくて扱いやすくて、でも象徴的でもある刀にしたんです。

 実際のところ、当初は僕は、それほど刀にこだわりはなかったんですが、脚本の松岡亮さんが僕の、超歌舞伎を古典にしていきたいという考えに応える形で作ってくださったという感じなんです。お互いの間の阿吽(あうん)の呼吸的な感じでしょうか。

−− それぞれの登場人物の手に、なぜ、小狐丸があるのかの説明が無いのも良いですね。

横澤 そこが歌舞伎のいいところですよね。背景を言い切らないことの楽しみみたいなところが歌舞伎にはありますよね。そういう、見ている人に「察してくれ」といっているような表現の面白さ。

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松岡亮脚本「御伽草紙戀姿絵」上演台本表紙。横澤氏の手にある台本には、ビッシリと書き込みがされていた

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