3Dキャラメーカー「VRoid Studio」、実は海外で人気? 背景には英語話者のVTuber
ピクシブが2018年から提供している3Dキャラクター作成サービス「VRoid Studio」。実は利用者の9割が海外ユーザーという。VR空間上の3Dモデルだけでなく、現実空間のフィギュアにまで手を伸ばすVRoid Studioは、いかにして海外でユーザーを集めるに至ったのか。
ピクシブが2018年から提供している3Dキャラクター作成サービス「VRoid Studio」。世界累計のダウンロード数は150万を超えているという。2月には作成した3Dキャラクターをフィギュア化できるサービス「pixivFACTORY 3Dプリントサービス」も開始。こちらも当初の想定を超える反響があり、初月の注文数は100件を超えたとしている。
そんなVRoid Studioだが、実は利用者の9割が海外ユーザーという。VR空間上の3Dモデルだけでなく、現実空間のフィギュアにまで手を伸ばすVRoid Studioは、いかにして海外でユーザーを集めるに至ったのか。
転機は海外VTuberとコロナ禍の“バーチャル需要”
VRoid Studioでは、あらかじめ用意された人型の3Dモデルに対し、パラメータ操作やテクスチャの差し替えを行うだけで、3DCGの専門的な知識がなくてもオリジナルのキャラクターを作成できる。利用は無料で、髪の毛の表現をはじめ、2Dのイラストを描くような感覚で操作できる点が特徴だ。
ピクシブの古賀和樹さん(新規事業部 VRoid部 マネージャー)によれば、VRoid Studioに注目が集まったタイミングはこれまでに2回あったという。一つは、海外で活動するバーチャルYouTuberの活躍だ。
日本ではキズナアイなどのVTuberが以前から活躍していたが、米国やカナダなどの海外でもその勢いは強い。中でも20年9月にデビューし、現在では270万人超のチャンネル登録者数を誇る英語話者のVTuber「Gawr Gura」(がうる・ぐら)の影響が大きかったという。古賀さんは当時の状況をこう分析する。
「Gawr Guraちゃんでいえば、3カ月程度でチャンネル登録数200万を突破していた。短い期間で収益性のあるタレントを作れるということでアメリカンドリームのような様相となり、アバターを作れるソフトのニーズが高まったのでは」
VTuberではなく、通常のYouTuberがアバターを使う例もあった。古賀さんによれば、1億人以上のチャンネル登録者数を有するYouTuber・PewDiePie(ピューディパイ)がアバターを使った配信を行ったときにもユーザーが増えたという。
そしてその勢いを後押ししたのが、コロナ禍による“バーチャル需要”の伸長だ。感染リスクの拡大に伴い、国内外でバーチャル空間を活用したサービスが増加。これにより3Dアバターの需要が伸びたという。古賀さんはこういった動向について「使われ方については予想の範囲内だが、スピードは想定以上だった。バーチャル空間を手掛ける事業者が増えているのでは」と振り返る。
今後はフィギュア化サービスも海外展開
そんなVRoid Studioを活用した施策としてピクシブが打ち出したのが、15年から提供しているグッズ製作サービス「pixivFACTORY」と連携し、3Dモデルをフィギュア化できるpixivFACTORY 3Dプリントサービスだ。
このサービスでは、まずユーザーがVRoid Studioで3Dモデルを自作。ポーズなどを指定してからファイルを出力し、専用サイトで入稿する。ピクシブはこのデータを基にフィギュアを3Dプリンタで作成し、10営業日ほどでユーザーに配送する。
価格は全長100mmのフィギュア制作で9900円、120mmで1万5940円、150mmで2万1780円。モデルをVRoid Studioで作れるため、3Dプリントの知識がなくてもフィギュアを作れる点が特徴という。
しかし、このサービスは現時点では海外への発送に対応していない。連携先のpixivFACTORYが日本のユーザー向けにサービスを展開しており、海外の利用を想定していなかったためだ。今後はpixivFACTORY側の海外対応を進め、需要に対応していくという。pixivFACTORYの責任者である児玉捷平さん(クリエイター事業部 FACTORY部 マネージャー)は今後の展望をこう話す。
「海外に工場を作って現地への発送を可能にする他、サイトも別言語に翻訳したい。今はpixivFACTORYがボトルネックになってしまっているので、改善していく」
一方で、VRoid Studioでは今後、3Dモデル用の衣服を売買できる機能を活用したマネタイズを本格化していくという。これまでは新規事業としてVRoid Studioを展開していたものの、こういった施策で収益化につなげる方針だ。
「創作をしている人にとっては、自分のキャラクターを手軽に立体化できるのは夢のある話。ノウハウのない人でもフィギュアを作れる点はユニークだと思うので、2Dで創作している人に3Dで創作できる楽しみを感じてもらい、クリエイティブの裾野を広げていきたい」(児玉さん)
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