2日間で1億円──投げ銭“スパチャ”の流行は日本特有? YouTube幹部に直撃インタビュー
YouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット」(スパチャ)に注目が集まっている。年間ランキングトップ10のうち9人が日本人となるなど、一見するとスパチャは日本特有の動向に見える。YouTubeの幹部にインタビューし、日本の動画文化の特徴などを聞いた。
YouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット」(スパチャ)に注目が集まっている。日本のバーチャルYouTuber(VTuber)や、コロナ禍で音楽イベントの開催を余儀なくされたアーティストなどが、この仕組みを利用してファンから多額のスパチャを集めている。
YouTubeのさまざまなデータを収集・公開している「Playboard」が発表した年間ランキングによると、2020年に最もスパチャを受けたのは桐生ココさんで、総額は約1億6000万円だった。桐生さんを含めた上位3位は1億円以上のスパチャを受けており、いずれも日本勢が独占。トップ10にもVTuberを中心に9人がランクインとなるなど、日本勢が席巻している。
コロナ禍で各イベントがオンライン開催へ移行する中、音楽アーティストの収益確保の手段にもYouTubeが活用された。ニコニコ動画やYouTubeで活動する4人組のゲーム実況&音楽制作ユニット「M.S.S Project」(MSSP)はそうしたアーティストの代表例だ。
MSSPは20年3月に全国ツアーの最終公演を無観客で実施。YouTubeで生配信したところ、視聴者数は7万人を超えた。スパチャによって2日間で1億円以上(推計)が集まったとされるほどの盛況ぶりで、Twitterでは一時「#MSSP無観客ライブ生配信」「スパチャ1億」がトレンド入りした。
このようなスパチャの盛況ぶりは日本独特なのか。今回、YouTubeのアジア太平洋地域のマネジメントを統括するマーク・レフコウィッツさんにインタビューし、日本国内の特徴やコロナ禍でのトレンドの変化などについて聞いた。
海外から見た日本の独特さはむしろ「サイレントVlog」
レフコウィッツさんはMSSPのコロナ禍での成功について「YouTubeで収益、ファンとのコネクションでも成功した良い例」と評価する。日本勢がスパチャの世界ランキングを席巻していることに一定の理解を示しつつも「スパチャ自体は世界全体でポピュラーなコンテンツだ」との見解を示した。
確かに、年間数千万円をスパチャで集めている海外の配信者も多い。上位層こそ日本のVTuberが占めてはいるものの、レフコウィッツさんはこうした層の厚さをもって、世界的なスパチャの流行を受け止めているという。
日本の独特さについてレフコウィッツさんは「サイレントVlogがむしろユニークだ」と話す。
サイレントVlogとはその名の通り、「Vlog」(Video Blog)と無音を指すサイレントを組み合わせた造語。厳密に無音というわけではないものの、代表例としてはBGMなどと組み合わせた勉強動画などがある。投稿者が顔出ししない動画や字幕のみの動画なども広義でのサイレントVlogに含まれるという。
「Vlogには自撮りで本人が出演するのが海外では一般的。日本は、声だけでの出演などクリエイター本人が登場しないのがサイレントVlogというユニークな形で根付いている。VTuberは世界的に人気になってきたが、サイレントVlogは日本独自のトレンドではないか」
コロナ禍での需要変化にも注目 フィットネスや料理動画に伸び
レフコウィッツさんが日本のYouTuberの動きで今注目しているのは、コロナ禍での動画需要の変化だ。
コロナ禍による在宅時間の増加に伴い、運動不足になる人も増加。“コロナ太り”という言葉も生まれた。
そうした状況の中で登録者を急増させた代表格が、竹脇まりなさんだ。竹脇さんは2018年末に「Marina Takewaki」チャンネルを開設。19年12月時点でのチャンネル登録者は約5万人だったが、フィットネス動画がコロナ禍で好評を得た結果、20年5月に登録者数が100万人を突破。その後も登録者数は増え続け、現在は215万人(20年3月時点)と倍増している。
YouTubeが20年12月に発表した「一年間でチャンネル登録者数を伸ばしたチャンネルランキング」(日本国内)では3位にランクイン。芸能人やアスリート出身者以外ではトップとなった。
また、緊急事態宣言下では飲食店の営業が一部制限されたことで料理動画へのニーズも増加。室内でできるDIYの動画も全体的に再生回数を増やしたという。
近年はテクノロジーや撮影機材の発展で、スマートフォンだけで撮影から編集まで完結できるなど動画投稿のハードルが下がり、誰でも好きな動画を作ってYouTubeで配信できる時代になった。
「YouTubeはありのままの自分を伝えられるプラットフォーム。何かを表現したい人、発信したい人にYouTubeはいつでも手を差し伸べるので、日本の皆さんが視聴するだけでなく発信していくことも楽しみにしている」
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